戦友
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
恐怖がないと言えば嘘になる。引っ込んでいてもいいのなら誰よりも後ろにいたい。
そんな思いを強制的に踏みつけて、ティアは真っ直ぐに前を睨んだ。佇むシャロンは、幼い頃によく向けられた冷ややかな目を向けている。
(やっぱり苦手かな、あの目は)
ふぅ、と息を吐く。
昔からあの、見たもの全てを凍らせるビームを放っているかのような冷たい目が苦手だった。厳しい口調に変わらない表情も相俟って、当時は何よりも怖い存在だったのを覚えている。あの顔を見るくらいなら飛竜と戦った方がマシだ、と思っていたくらいだから相当だ。
それは今でも変わらなくて、すぐにでも目を逸らしたくなる。何もかも投げ捨てて全てを他の奴等に任せたくもなってしまう。
(けど、やるしかない…か)
だけど、それを他に任せて見ないフリをする事が出来ないのがティアである。相手が誰であれ、自分がどんな境遇であれ、任せていい事とそうでない事の区別はハッキリとつけて、自分の事に誰かの手を煩わせてはいけないと思う。
誰かに頼る事を誰からも拒まれたティアだからこそ、そう思うのかもしれない。ただ頼るだけでは根本が何も変わらないと気づいているから、後ろに下がる選択肢を早々に消した。
きっと彼等は、ここまで来た彼等なら、ティアの代わりくらい笑って引き受けるだろうけど。
(戦って、勝つ。今までと何も変わってない。だから、大丈夫)
自分に言い聞かせる事で、頭の中を空っぽにする。1度目を閉じてゆっくりと開けば、一気に視界が開けた気がした。吸った息を、静かに吐く。
頭から氷水を被ったように全身が冷え、感覚が一気に研ぎ澄まされる。流されそうな感情を投げるように捨てれば、戦闘準備は整った。
あとは、動き出す為のスイッチ代わりになる覚悟だけ。
(この戦いで勝てば、カトレーンの名は地に落ちる。負ければ、私が明日生きているのかさえ解らない)
水の剣を、右手に握りしめた。この感覚はもう幼い頃から慣れたもので、密かに安心する。
どちらにもメリットとデメリットがあって、でもそれは当然で、ティアは冷静に思考を整理する。
(だったら何なの?)
追い込むように囁いて。決断を無理強いするように呟いて。
ティアの足が、音1つ立てず地を蹴った。
(戦うと決めて来たんだから、恐れているようじゃ戦わないのと同等でしょうが!)
跳んで、握りしめる水の剣を振るった彼女の背中を、ナツ達は目で追っていた。
着替えたのか、その服装はよく見るワンピースで、おろした青い髪が動きに合わせて揺れる。トレードマークともいえる、小さい頭の上に乗せられた大きめの白い帽子が髪の青を引き立てる。
無駄のない動きで振り下ろされた剣をシャロンが避け、金色の光
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ