戦友
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1度言うわ。力を貸しなさい」
深く被った、白色の帽子の奥で。
―――――――青い瞳が、悪戯っぽく煌めいた。
ここでナツは、大きな勘違いに気づく。
いつぞやにティアと喧嘩した時、“ティアの事が好きなのか”と尋ねられた。
確かにナツがティアに対して抱くそれはルーシィやハッピーに向けるものとは何かが違う気がして、それを所謂“恋”と言うのかと思い慌てたのを思い出す。
ナツは愛やら恋やら、とりあえず色恋沙汰全般に疎い。
だからその分、少し他と違うような何かを抱く相手であるティアが、よくギルドでルーシィやレビィがきゃあきゃあと騒いでいる“好きな相手”という奴なのか、と考えた。
それからしばらくもよく解らないままで、“単なる仲間”と片付けるには多すぎて、かといってそれが愛だの恋だのの類かと言われるとそれには足りない気がして。
―――――が、今ここで、それが何かが解った。
それはナツも知っているものの1つで、それでも違う、何やら複雑なモノだった。
“信頼”。
たったこれだけの文字に納めるには溢れすぎる。
チームメイトのルーシィよりも、相棒のハッピーよりも、誰よりも信じている相手。コイツに背中を任せておけば安心だ、と何の根拠もなく思ってしまうような。
今までここまで信じた相手は少なくて、だからこそ抱くそれはナツの中では異質で、だからよく解らない“恋”という部類に半ば適当に分けたような感じだ。
でも、違う。
絶対的な信頼。かつても今も、あの人間じゃない育ての親に抱いたのと同じような、どこか憧れを含んだそれはとても眩しくて、何故か懐かしかった。
これが、ティアに対する感情の変化の実際。
「……解った。燃えてくるじゃねーか」
ニッと口角を上げる。
いつだって、守られて終わるような奴ではなかった。助けをただ待つだけの悲劇のヒロインにはなれない奴だった。
だったら、そうなのならば。
―――――魔王に挑む女戦士と共に戦う、助っ人にくらいなろうじゃないか。
「よし」
ボスッ、と左掌に右拳を打ちつける。
それを見たティアは短く息を吐いて水の剣を握りしめ、前を見据える。
「行くぞ、戦友!」
「足引っ張らないでよ、戦友」
そして2人は、お互いの拳を合わせた。
互いを鼓舞するように。
スイッチを、入れ替えるように。
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