第百八十三話 和議が終わりその九
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二人にだ、こう言ったのだった。
「では」
「はい、わかりました」
「帝と朝廷に」
二人も応えてだ、そうしてだった。
金銀や財宝、多くのものが皇室と朝廷に献上された。信長はそうしたものを献上してからそうして言うのだった。
「是非お受け取り下さい」
「有り難きこと」
帝はこう答えられた、そしてだった。
信長からの贈りものも受け取りだ、そのうえで。
信長は朝廷を後にした、その次は。
幕府に赴きだ、義昭にもだった。
出陣のことを述べ贈りものもした、義昭は天海と崇伝を従えたままそのうえで信長に対してこう言ったのだった。
「わかった、ではな」
「はい、それでは」
「武運を祈る」
やたら鷹揚な態度でだ、義昭は信長に答えた。
「勝って帰るがよい」
「畏まりました」
幕府のやり取りはあっさり終わった、そして。
信長が退出してからだ、義昭は二人の僧達にこう言った。
「贈りものといってもな」
「帝に贈られたものよりも」
「少ないですな」
「余は将軍であるぞ」
だからだと言う義昭だった。
「それであの程度の贈りものとは」
「全く以てですな」
「幕府を軽んじておられますな」
「全くじゃ、許せぬ」
こう言ってだ、そしてだった。
僧達にだ、こうも告げた。
「ではやはりじゃ」
「織田家が摂津に入れば」
「その時に」
「挙兵じゃ」
それをするというのだ。
「準備は整っておるな」
「はい、何時でも」
「兵を集められまする」
「ならよい、ではな」
織田家の軍勢が摂津に入ったその時にというのだ。
「すぐに兵を挙げてな」
「都をですな」
「押さえますな」
「そうして本願寺や大名達と共にじゃ」
毛利に武田、上杉、北条達とだ。
「織田家を倒してじゃ」
「武門の棟梁としての立場を見せる」
「この天下に」
「幕府は天下を治めるものじゃ」
そしてだ、義昭はというのだ。
「余こそがじゃ」
「はい、公方様こそ天下人です」
「他の誰でもなく」
また言う僧達だった。
「だからこそ」
「兵を挙げましょうぞ」
「その時はな、ではな」
「間も無く」
「動く時かと」
「そうじゃな、具足じゃが」
義昭はここでだ、僧侶達にさらに言った。
「あれを着るぞ」
「尊氏公が着ておられた」
「あの具足をですな」
「足利幕府は尊氏公よりはじまった」
足利尊氏からだ、その彼のことから言う義昭だった。
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