第二十六話 姉妹の日々その十二
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「だから切られないのよ」
「そういうことね」
「そうよ。ただ」
「ただ?」
「私は貴女を絡め取るつもりだったけれど」
そのリボンでだ。
「かわしたわね」
「そのことに驚いているのかしら」
「いえ、驚いてはいないわ」
それはなかったというのだ。
「想定していたわ」
「そうなのね」
「この程度では捕まらないのね」
「生憎ね、私の武器は爪だけではないわ」
「その動きもなのね」
「そういうことよ。虎は爪と牙だけではないわ」
この二つに加えて、というのだ。
「動きもあるのよ」
「そして力も」
「その通りよ、だから貴女のリボンにもね」
「かからなかったのね」
「ええ、そうしてね」
こう言ってだ、怪人は再び動いた。
今度は右にだ、音もなく動き。
そうしてだった、上に跳んだ。
その動きを見てだ、薊が黒蘭に言った。
「黒蘭ちゃん、まずいぜ」
「ええ、わかっているわ」
黒蘭もその怪人を見つつ薊に返す。
「リボンではね」
「ちょっとまずいだろ」
上から来る怪人を相手にするには、というのだ。
「それじゃあな」
「だからね」
「武器を替えるんだな」
「これにするわ」
こう言ってだ、黒蘭は手に持っている武器を替えた。その黒いリボンが消えてそれと入れ替わりに出て来たのは。
クラブだった、黒蘭は両手に黒の新体操のクラブを持った、そのクラブで。
上から急降下して今度は牙を向けて来た怪人の口に反撃の一撃を加えんとした、しかし牙はそれで砕けずに。
激しく打ち合う音がしてだった、怪人は後ろに弾き返される形で着地した。黒蘭も衝撃で幾分か後ろに動いた。
しかし体勢は崩れていない、そうしてまた向かい合う形になった怪人に言った。
「残念だったわね」
「今度は私がね」
「ええ、リボンで防げない攻撃はね」
「クラブで防げるわね」
「今みたいにね」
それが出来るというのだ。
「この通りね」
「色々と使えるのね」
「そうよ、新体操のものなら」
その道具なら、というのだ。
「私は何でも使えるわ」
「見事ね」
「慣れよ、これも」
「いつも使っているからこそというのね」
「だからこうして使えるのよ」
こう怪人に返すのだった。
「今もね」
「そういうことね」
「そうよ、このクラブなら」
今手にしているこの武器なら、どうかというと。
「接近戦も出来るわ」
「そうね、打って」
「だから私からも」
すすす、とだ。黒蘭は左に時計回りに動いてだった。怪人との間合いを徐々に詰めんとしていた。そうしてだった。
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