七十八 帰郷
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。澄んだ青に惹かれてぼんやりと天を仰ぐ。
そのまま大きく欠伸を漏らした息子の様子に、父親のシカクは呆れた声をかけた。
「お前…ほんっとーにやる気が無いなぁ」
「うっせ」
父親の背中に言い返すと、シカマルはちらりと門を見遣った。木ノ葉の里の出入り口たる『あ』と『ん』の扉の向こうを透かし見る。息子の視線を追ったシカクが、にんまりと口角を吊り上げた。
「なんだ?愛しのナルちゃんはまだ帰って来てねぇのか?」
「ごほ!?愛し…っ!?」
シカクの揶揄に、シカマルは思わず咽る。咽過ぎて涙目になっても、シカクは悪びれた様子もなくにやにやと笑った。自身によく似た面立ちのシカクが冷やかしてくるのを、うんざりとした風情でシカマルは見上げる。
そもそも彼が父と一緒にいる理由は、母親の一声だ。
先ほどまで家でごろごろしていたのだが、母親に「お父さんの仕事でも手伝いなさい」と怒られたので外出せざるを得ない状況になったのである。そこで渋々ながらも、火影邸に用事があるというシカクと共に其処へ向かっている最中なのだ。
もっともシカマル本人は、面倒臭いという不満がありありと顔に出ているが。
「しっかし四代目の御息女たぁ、お前も見る目があるねぇ」
「……べつに、火影は関係ねぇよ。あいつはあいつだ」
シカクの言い方が気に触ったのか、父親を睨みつけるシカマル。一端の男らしい主張に「ほお〜」とシカクは愉快げに眼を細めた。
「なかなか言うようになったなぁ。女が苦手だったお前が…」
「今でも苦手だっての……妙にサバサバしてる割に、やたらつるむし、仲が良いんだか悪いんだか…よくわからねぇしよ」
そうグチグチと文句を並べるシカマルの顔は心なしかげっそりしている。思い浮かぶのはもう一人の幼馴染みである山中いのと、その親友・春野サクラ。
「―――でもナルちゃんは、べつなんだろ?」
火影邸の長い階段を登りながら、肩越しに振り返ってシカクがにやりと笑う。言葉に詰まったシカマルは頬の赤味を誤魔化すように顔を背けた。
高く聳え立つ火影邸の周りをぐるりと囲む螺旋階段。そこから見える里を一望する。
新しい火影の件により木ノ葉は現在騒がしい。候補として挙げられた志村ダンゾウという男が火影になるかもしれないという話で持ち切りなのだ。
その信任投票の最終日だからか、特に今日は里中が落ち着かない。
他人事のように思案していたシカマルは、不意に最近らしくない行動をとる同期を思い出した。あの一匹狼だったサスケが奈良を始めとした名家にダンゾウの火影就任について協力を仰いでいるらしい。
色々奔走している彼の行動に最初は眼を疑ったものの、シカマルも多少手助けしていた。アカデミー時代で、あまり慣れ合わなかった相手だが、シカマルとてサスケは同じ木ノ葉の仲間だと思
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