七十八 帰郷
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違和感を覚えた白だが、ナルトが次に述べた宣言に言葉を失ってしまう。
「木ノ葉に戻る」
愕然とする白の前で、ナルトは金の髪を軽く振った。髪に積もりし紅の花弁が散り、雪白の如き羽織と共に雪明かりの中、舞う。
ほのかな光がナルトの首元をおぼろげに照らし、白は、あッ、と声を上げた。
瞳に飛び込んだのは、『朱』。
朱と描かれた指輪の首飾りは、先ほど白が覚えた違和感の正体。
今まで装飾品など身につけたことのないナルトの首にかけられたソレは彼の胸元でその存在を主張している。
指輪に繋がれた銀の鎖がキラキラ輝くのを見て、白は悟った。
今から彼が何をしに行くのかを。
「ナルトくん、僕は…っ」
「白」
言葉を遮ったナルトの羽織の袖がふわりと翻る。途端、その袖が巻き起こしたかのように、突風が吹き荒れた。
静かに降っていた合歓木の花が一気に零れ、ほぼ全ての花が墜ちてしまったかと思えば、雪と共に天へ舞い上がる。
雪もまるで花弁の如く、ひらひらと風に乗って、群青色の虚空で踊り狂っていた。
決意を秘めた青の双眸から、白は眼を逸らす。眼に留まったのは、倒れ伏せる大木。
当初、ナルトが出掛ける前に腰を下ろしていた樹木は、重吾と共に見送った際には枯れていた。だが、今や緑が芽吹いている針葉樹は、白にその木の花言葉を思い出させる。
ナルトと白の頭上へ一斉に降り注ぐ、白き雪と紅き花。雪花の雑じる花嵐の中で、ナルトが静かに口を開いた。
「うちはサスケに、話がある」
白の脳裏に浮かぶのは、ひとつの花言葉―――『哀悼』。
季節外れの雪は、何時の間にか止んでいた。
曙の空。
東の雲からは微光が射し込み、薄暗い室内をほんのり照らす。
里のあちこちで人々が目覚め、木ノ葉が動き出す様を老人は朝ぼらけの中で眺めていた。
「―――ダンゾウ様」
不意に背後で己を呼ぶ声に振り返る。配下である『根』の一人が跪いているのを見て、ダンゾウはすぐさま察した。
「ダンゾウ様。綱手姫が御帰還なされました」
推測通りの答えに、片眉を軽く吊り上げる。綱手が木ノ葉に戻ってきたという部下の報告にも動揺一つせず、むしろ予想通りだとダンゾウは里を俯瞰した。
「ようやくのお出ましか…」
沈黙していた里が活動を始める。次第に増える、人々の賑わい。それを耳にしながら、ダンゾウは火影邸へ眼をやった。
中が見えぬとも脳裏にはっきり浮かぶのは、執務室に設けられる火影の椅子。
其処に腰掛ける己を想像し、ダンゾウは口許に弧を描いた。
「…だがもう遅い」
晴れ上がった空は澄み切っており、雲ひとつ無かった
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