先を見るしか叶わぬ龍に
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ば、お前は決して生きられないんだ。
薄く笑って、彼女は立ち上がる。
「あなたには何が見えたのかしら?」
「さあ? 捉われてくれりゃオレの勝ちかもしんねーな」
足取りは妙にしっかりとしていて、小さい身体なのに大きく見えた。
「楽しかったし、美味かったぜ。お前との時間。こんだけ悪い事出来なかったのは久しぶりだ。さすがは曹孟徳、ってな。見送りは不要だ。じゃあな」
ひらひらと手を振る姿は、もはや形式さえ厭わぬ雑多なモノ。
己よりも下と扱うその態度に、苛立ちがまた湧く。しかし、じっと見据えるだけに留めた。
嫌な気分だった。
最期の最期に清々しさを残せるかと思ったのに、彼女は悪龍らしく掻き乱して、華琳の前から立ち去った。
「……誰もが未来を切り開いているのだから、思い通りになるモノばかりでは無い、か。本当に、この乱世はままならない」
ぽつりと零したのは澱みを消さんとして。
悔しさは無いが、どうしようも無いわだかまりのようなモノが湧いて来て空を見上げた。
曇天が濃く、灰色は重かった。振り払いたいと願っても、願うだけでは何も変わらないと知っている。
「元より……」
口に出せば軽くなりそうで先は続けなかった。
――全てを喰らい呑み込む。それが私なのよ、劉表。
アレがいてもいなくても、なんら変わらない。
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