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乱世の確率事象改変
先を見るしか叶わぬ龍に
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 粘りつくような灼眼の妖艶さにも圧されず、華琳は真っ直ぐにアイスブルーで穿った。

「袁家の事は……もういいのでしょうね」
「今更蒸し返しても袁家とお前らの戦は揺るがねーだろ。もうすぐ都に着く虎とのじゃれ合いも、お前は邪魔しないだろうからそっちもいい」
「なら……徐晃の事、かしら?」

 名を口に出すと、劉表は感嘆の吐息を一つ。
 もはやこの場は先ほどまでの平穏な昼下がりでは無い。
 打算や計算を含み、内を読み合い、互いの利を得つつも自身がより多く手に入れる。そういった場。
 謁見以来の心地いい空気に、華琳はいつもの不敵な笑みを広げた。

「……聡過ぎる奴の相手ってのはめんどくせー」

 は……と目を切ってバカにした嘲笑を零し、ちろりと唇を一舐め。
 華琳は劉表がどういった狙いを込めて尋ねて来たのかもある程度予測出来ているが、自分から解き明かすわけも無い。

「黒麒麟、黒き大徳、なんて呼び名が有名だが……オレは違うと思ってんだ。奴は“天の御使い”なんだろ?」

 ズバリと言い切る瞳は知性の輝き。
 机に両肘をついて、にやける笑みは探りの視線。華琳の表情一片さえ見逃してやらない……そういうように。

「……“天の御使い”、ね。
 天よりの使者、乱世を治世に導く存在、大陸を救う救世主……ふふっ、くだらないわね」

 今度は華琳が笑った。否、嘲笑った。
 自分に向けてか、それとも目の前の女に向けてか。

「天より与えられた命に従う傀儡の如きモノがこの大陸を救う……そんなモノをわざわざ私が求めたと……あなたはそう言っているに等しい」

 じわり、と怒りの気が身から出た。
 自分があの男にそのような評価を下そうとした事すら腹立たしかった。

「与えられる平穏は望まない。この大陸に生きるモノが自身達の手で掴みとってこそ、たった一つの命で手に入れた平穏だからこそ尊い。嘗て天に上った英雄達がそうであったように」

 ギリギリの言い回しで、されども自身の心を告げる。
 決められた定め、与えられる幸せ、どちらも華琳は……否、覇王は望んでいない。それらを求めるのなら、自分は覇王では無くなるだろう、と。

――自身の進む道が天の定めた予定調和であるなど、生きているモノ全てへの冒涜に等しい。未来は……私達自身が切り拓くモノだ。

「お前が劉協様の御身を預かってるわけだから、徐晃が御使いなら所属を変えた事にもすんなり納得出来るんだけど?」

 そうやって引き抜いたのではないのか、と裏に隠されている。
 隙を伺う言は、秋斗と華琳の関係を読み取る為に投げられた小石。
 情報を開示するか否か、この女を利用して何を得られるか、華琳の頭は答えを弾きだす。

「それなら初めから劉備の所になど居ないでしょ
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