第二十六話 姉妹の日々その二
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「そうしておくわね」
「ええ、お願いするわ」
鈴蘭はトーストをかじり続けながら妹に答えた。
「これからもね」
「わかったわ、今日にでもね」
「連絡入れておいてね」
「それじゃあ」
黒蘭も答えた、そうしてだった。
黒蘭は今度はハムエッグを食べた、フォークとナイフで上手に切って口の中に入れて食べてから姉に言った。
「今日の焼き加減は」
「固めにしたの」
「そうよね」
「今日の気分でね」
そうしたというのだ。
「卵の黄味を固くしてみたの」
「これもいいわね」
「黒蘭ちゃんは柔らかくすることが多いわよね」
「半熟気味でね」
実際にそうだとだ、黒蘭は答えた。
「特にハンバーグに乗せる時は」
「その時はいつもよね」
「ハンバーグに目玉焼きは合うけれど」
最高の組み合わせの一つであろう、これもまた。
「その時はね」
「絶対によね」
「ええ、それはね」
絶対に、と言うのだ。黒蘭もまた。
「外せないわ」
「ハンバーグには半熟ね」
「私の好みだけれど」
ハンバーグの上に乗せる目玉焼きは半熟だというのだ。
「そう決めているの」
「そういえば私もね」
「姉さんがハンバーグを作る時もよね」
「ええ、よく目玉焼きを乗せるけれど」
鈴蘭もだった、その時は。
「やっぱり半熟にしているわ」
「そうよね」
「それがハンバーグには一番合うのよね」
「そうそう、あの時はね」
「チーズを乗せる時はね」
「もう溶けないとね」
二人のこの好みも同じだった。
「よくないわね」
「本当にね、それでね」
「今は固めにしたのね」
「そうなの、今日の気分で」
黄味は固めに焼いたというのだ。
「そうしたの」
「深い意味はないのね」
「ええ、ないわ」
特にというのだ。
「そうしたことはね」
「姉さんらしいわね」
「実は私はね」
「気まぐれよね」
「そうなのよ」
微笑んで言う鈴蘭だった。
「皆は知らないけれど」
「知っているのは私だけね」
「そう、貴女だけよ」
双子も妹である黒蘭だけだとだ、鈴蘭は彼女自身に告げた。
「そうなのよ」
「そうね、私は姉さんのことをよく知っているわ」
「何でも知っているとは言わないのね」
「その人の全てを知ることは誰にも出来ないわ」
よくその人物のことを一番知っている、何でも知っているという人がいる。しかしそうした人こそその相手の人のことを知らないことがあるのだ。何故なら知っていると思っていると思い込んでしまってそこで断定してしまうからだ。
黒蘭にはその断定がない、それでこう姉に返したのだ。
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