5部分:第五章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第五章
「お食べ下さい」
「どうか」
「何のつもりですか?」
デメテルは彼等が出してきたその石榴を見て険しい顔になった。
「それは」
「それはといいますと」
「一体」
「とぼけてはいけません」
全てを見抜いている言葉だった。
「冥界のものを食べればそれで冥界に留まらなければならなくなります」
「いえ、それは」
「それについては」
「私がそれを知らないと思っているのですか」
怯む二柱に対してさらに言うのだった。
「このデメテルが。ハーデス」
「うむ」
今度は己の兄弟に返した。ハーデスはこの場ではじめて言葉を出した。
「貴方は彼等を許すのですか。彼等のこれを」
「私は。それは」
「貴方達が何をしても私は許しません」
デメテルも言う。それは断固たる言葉だった。
「何があろうともです」
「決してだな」
「そう、決してです」
ハーデスに対して答える。
「何があろうともです」
「わかった」
ハーデスはデメテルの言葉を沈痛な顔で受けた。唇を噛んでいるのがわかる。彼としても受け入れられない言葉であったのだ。
しかしだ。それでも彼は頷いた。そうするしかなかったからだ。
「それではだ。ペルセポネーよ」
「はい」
「さらばだ」
こう言って彼女から背を向けたのだった。
「これでな」
「あの」
「さらばだ」
背を向けたままの言葉だった。
「それではな」
「左様ですか」
「帰るがいい」
そしてこうも告げたのだった。
「そなたの帰るべき場所にだ」
「ハーデス様・・・・・・」
「私は一人でいるべきだった」
ハーデスはペルセポネーから背を向けようとはしない。それはどうしてもだった。望んでいたものを諦める。それは背中からよくわかった。
そしてそれを見たペルセポネーはだ。静かにこう言うのだった。
「では私は」
「さあ、帰りましょう」
「いえ、その前にです」
母に対して静かに言ったのだ。
「あの」
「は、はい」
「何でしょうか」
ヒュプノスとタナトスに声をかける。彼等は焦った声で応えてきた。
「その石榴を」
こう言うのであった。穏やかな声で。
「頂けますか」
「しかしこれを食べれば」
「貴女は」
「そうよ、それは絶対に止めて」
デメテルも彼女の後ろから言う。言葉は必死のものだった。
「何があっても」
「その石榴の実を食べれば」
だがペルセポネーは言葉を続ける。ヒュプノスとタナトスに対して。
「冥界にですね」
「はい、一粒で一月です」
「そうなります」
彼等も今は素直に述べた。それはどうしてもだというのだ。
「それで宜しいのですか?」
「ですが」
「四粒頂きます」
ペルセポネーは暫く考えた。そうしてそのうえで言
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ