十一幕 野ウサギが森へ帰る時
1幕
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ルドガーとの約束を破ったエルを悪し様に言うとか。
(ぜんぶ、ぜんぶ、フェイが勝手に作り上げた世界との壁。王様の言ってたヒキョウモノのヒガイモーソー)
――フェイの中で泣いていた小さなウサギは、たった今死んだ。
フェイはルドガーの手首を掴むと、ぐいぐいと引っ張って社長室を出た。ルドガーから困惑が伝わるが、今は気にしていられない。
エレベーターの近くまで行く。
「ルドガー、GHS貸して」
「え、は」
「貸して」
ルドガーは驚いた様子でフェイをまじまじ見たが、ホルスターから出したGHSをフェイに渡した。
フェイはGHSの着信履歴を開き、ジュードの番号をコールした。
「ジュード? わたし、フェイ」
『フェイ! あれからどうなったの? そっちに戻りたいんだけど、ヴェルさんが通してくれないんだ。これ以上は警備を呼ぶって言われて』
「そこにいて。ミラさまも一緒に。今すぐ行くから」
『ルドガーも?』
「いっしょ」
そこでフェイはルドガーに通話中のままのGHSを差し出す。
ルドガーははっとしたように、すぐGHSを耳に当てた。フェイはしかと肯いた。
ルドガーはGHSをフリーハンズに設定して話し始めた。エルをビズリーに連れて行かれたこと。リドウが暴露したビズリーの真意。それらを通話でジュードたちに伝える。
『精霊を道具に……それがビズリーの真の目的だったのか』
『しかも、エルを利用するなんてっ』
ぐ、とココロが圧迫される。
利用するならいっそフェイ一人を選んでくれればよかったのに。そもそもフェイはエルと違って弱虫だから、あの場でビズリーに身を差し出すなど考えも及ばなかった。
やはりあの姉はフェイなどよりずっと強い。
「今から俺たちもそっちに降りる。合流次第、全員でカナンの地へ向かおう。アルヴィンたちに集合かけといてくれ」
『分かったよ。エントランスで待ってるから』
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