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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第三章『更識簪』
第三十八話『本日は休息日和・駅前編』
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その子がこの財布を落としたまま駅側へ向かっていったのだという。
「そんなもん……、すぐそばの交番に届ければ良いだろ」
「すぐ走っていけば、追い付けると思って……」
「だったら、ちゃんと一声かけてから行けよ」
「ちゃんとかけたぜ?」
「俺らが返事するまでかけろよ……」
呆れてため息をつく弾に、笑ってごまかす一夏。
「……で、それらしいヤツは見つかったのか?」
「う〜ん、シュークリームみたいなツバのついた帽子あるだろ?」
「しゅ……、あぁ、“キャスケット”のことか?」
「それかなぁ。それを思いっきり深く被っていて、ボタンのたくさんついた上着を着ていて、ヒラヒラの学生服みたいなスカートで……」
「……なんだそれ」
「あ、あと、脚は黒タイツで、茶色いブーツは居ていたっけ」
釈然としないながらも、弾は一夏の説明に耳を傾ける。
走り去ったのを見てここまで覚えているとは、なかなかのものだ。一夏の戦闘センスの良さを支える、本人の無自覚な才能の一つだろう。
普段の物覚え悪さも、このくらいどうにかなればいいのだが。
そう思った瞬間、ふと妙な気配が後ろからした。
まるで刺してくるような、強い感覚――。
敵意に近いものを感じ、慎重に後ろを振り向くと……
「……なあ、一夏」
「なんだよ、修夜」
「……お前の言った、『帽子に上着でヒラヒラスカートの黒タイツブーツ』って、もしかしてアレか?」
俺が指した方を二人が見ると、まさに一夏が話した格好とドンピシャな女子がそこにいた。
いた……というか、アーケードを支える太い柱に隠れながら、睨み付けるようにこっちを見つめている。
帽子は目深……というか眉の際まで被り込み、風邪なのか花粉対策なのか、薄ピンクの大きなマスクを口に当てている。
言いたくはないが、どう見ても不審人物にしか見えない。
「そうそう、あの子だよ。お〜い、そこの帽子の子!」
一夏が手を振り、帽子の女子を呼ぼうとする。
だが相手は何故か、周囲をキョロキョロと見回し始めた。
「そこの君だよ、柱の陰にいる君!」
弾の一言で、向こうも自分が呼ばれたことに気が付いた――が、なぜか余計に柱の陰に引っ込んでしまった。
「どうしたんだろ……?」
何となくだが、この手合いはもしや……。
「一夏、財布を貸せ」
「えっ、ちょ、ちょっと修夜?」
なかば一夏から奪うように財布を持った俺は、真っ直ぐに柱の陰へと向かった。
対して、向こうは案の定、変に身を硬くしてうろたえている。
目の前まで行くと、帽子とマスクで顔は判りにくいが、ものすごく警戒しているのは雰囲気で察しが付いた。
「これ、アンタの財布だろ。俺の友達が拾ったんだ、ほら」
下手に気を遣うより、こういうヤツには直球を投げた方が賢明だ。
直球を投げられた方は、何故かそのま
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