第4話 夢ノヨウ恋ノヨウ
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り道に考えていたことを実行すべく動いた。
手足が震えるのを堪え、自転車をACJ道東支社の西棟へ急がせた。夜間にも働く人間はいるから、どこかが開いているはずだ。裏に回ると、明かりが点るガラスのドアがあった。受付に守衛が一人いた。一般の警備員だ。
「こんばんは」
守衛は眠そうな目をくれた。
「社員証を見せてください」
昨日渡されたそれを守衛に見せた。
「ご用件は?」
「忘れ物を取りに来ました」
「行き先は?」
「特殊警備室の十三班の待機室です」
「どうぞ」
とりあえず侵入には成功した。
クグチは警備員室には向かわず、昼間マキメに案内された倉庫を目指した。
倉庫の戸は廊下に向かって開け放たれていた。戸が盾になって、内部の作業員の目からクグチを隠している。そして、鍵穴には鍵が刺さったままだった。
クグチは鍵を抜いた。それから足音を立てないようにそっと引き返し、建物を出てから、自転車置き場に全力で走った。
門限の直前に寮に帰った。ひどく汗をかいていた。部屋の電気を消す。暗闇の中で着替える。脱ぎ捨てた服のポケットから倉庫の鍵を取り出した。
倉庫の鍵は、きっとすぐに付け替えられてしまうだろう。機会はそうない。
戦いましょう、戦いましょう、スカイパネルがしゃべっている。クグチはイヤホンを外す。強い光がカーテンを染め、消えて、また染めた。戦いましょう。道東居住区にほど近いあさひ打ち上げ基地防衛の件だ。Q国の件だ。
クグチは壁を向いてきつく目を閉じる。
紫色の果実が腐臭を放つ影の庭園の夢を見る。果実の中には岸本の顔があり、マキメの顔があり、島の顔があり、強羅木や、南紀支社での同僚や、都市の人々の顔があり、甘ったるい果実にくるまれ死んでいく。
ハツセリが何か言っている。だけど聞こえない。
―3―
翌日出勤したクグチは、「今日は休みだよ」とマキメに言われる。控室には岸本もいて、咎めるようにクグチを睨んだ。岸本は週替わりでチームを見ているそうだが、今週はクグチのチームの担当らしい。
「シフト表はもらってないのか」
「はい」
「島に渡しとけって言ったのに。アイツほんと使えねえな」
クグチは気まずくなって目を逸らした。そういうことをわざわざ口に出して言う奴のほうがよほど嫌いだ。
「うん、あのね、余分は刷ってないんだ。寮に戻ってな。島に今日中に渡すように言っておくから」
クグチはマキメに従うことにした。守護天使を持たないクグチたちは、電磁体を介したデータのやりとりができない。不便だが仕方がない。出て行こうとしたら、ドアが開いた。
入ってきたのは一番年配の星薗だ。職場だというのに酒臭い。岸本が何を言うかと思ったら、顔をしかめただけだった。
「おう、アレやろうや、アレ。昨日の続き」
「星薗
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