第4話 夢ノヨウ恋ノヨウ
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い」
「幸福の基準がなければ、と言うのが正しいんじゃない? 幸福の基準が明確であればあるほど、そこからあぶれる人は多くなる。そしてあぶれた人は不幸。更に守護天使育成はゲーム。ゲームのルールと勝敗は明確じゃなくちゃいけない」
クグチは買い物袋に手を突っこんだ。紙で包まれたトロフィーを取り出し、ハツセリに突き出した。怪訝な表情で受け取ったハツセリは、紙をはがして目を見開いた。
「……懐かしい。どこで手に入れたの?」
「あんたは知らないんだな。誰がこれを俺に寄越したのか」
「その口ぶりじゃ、向坂君からでもないのね」
「向坂はあんたのことを知ってるのか? 強羅木は?」
ハツセリはカード型のメモリデバイスに目を止め、大股で廃庭園の出口に歩いていく。いつの間にか彼女は懐中電灯を持っていた。クグチも無言でついて行った。
建物の奥、二階の一室に、廃墟にしては清潔に掃除された一室があった。部屋のデスクの全てにかなり旧式のパソコンが設置されている。
「これを再生できるのは、私が知っている中ではこの一台だけ」
「起動するのか?」
「わからない。外付けバッテリーを持っておいで。ここまで旧式のだと、手に入りにくいかしらね」
「いや」クグチは首を振った。
「心当たりがある」
先日岸本たちが捕まえた男たちとは、ハツセリはどういう関係だったのだろう。それについて聞いていなかったと気付いたのは、寮に戻ってからだ。
結局ハツセリの正体は何だろう。あの肉体はただの少女であるとして、ハツセリの名を名乗り、自分は幽霊である、と語った女の正体は?
死んだ女の幽霊が少女に憑りついている、などという説明を信じるわけにはいかない。
しかし、幽霊という言葉にはもう一つの意味がある。
守護天使は幽霊になれる。守護天使は持ち主の生前の記憶を引き継ぎ、自分がその記憶の持ち主自身だと信じることができる。死の記憶を持つ理由を、自分がその死者であるからだと、すなわち今の自分は幽霊であるからだ、と判断し、思いこむことができる。
そして守護天使は他の守護天使に干渉できる。
寝転がっていたクグチは思わず起き上がった。
例えばあの少女が幼い頃から守護天使を持っていたら。
例えばあの少女の新しく未発達な守護天使が、幼い内からあの女の守護天使の干渉を受け、情報汚染されていたら。
幼児を、自分は幽霊だと、この肉体に憑依した死んだ女だと信じこませることは容易い。
まさか。そんな話は聞いたこともない。
しかし、全くあり得ないと言い切れるだろうか。
そう考えることは、ハツセリの話ととりあえず矛盾しない。しかし矛盾しないことは証拠にはならない。
クグチはいらいらして部屋を歩き回ったが、もう一度服を着替え、自転車の鍵を取った。こうしていても仕方がない。帰
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