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Magic flare(マジック・フレア)
第4話 夢ノヨウ恋ノヨウ
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の正式な国名知ってる?」
「余計な話は聞きたくない」
「あなたのお父さんは、Q国で泥棒をしたの」
 ハツセリは庭園の奥のガラス壁に歩いていく。黙って続きを待った。ハツセリは肩を竦めた。
「ひどいもんだわ。研究泥棒。生前の私と明日宮君は、あと強羅木君も向坂君も、大学を出た翌年には軍属の研究員としてQ国で戦利品部隊に同行していた」
 強羅木の名が出たことでクグチは動揺したが、彼と明日宮エイジは学生時代からの友人だったという。明日宮エイジを知っているのなら、強羅木を知っていても不思議はない。
「戦利品部隊?」
「略奪部隊ね。Q国で地上戦が行われた後、軍は陥落した都市から文化財などを盗み出し、盗み出せない物は破壊した。私たちが関わったのは電磁体研究所の研究データだったけど、あなた、その方面には詳しくなさそうね。折角だし、それじゃあ明日宮君の話をするわ」
 窓越しの光がハツセリの横顔の輪郭を浮き立たせる。
「彼、いつも忙しそうだった。学生のうちに結婚したから。その後陸軍所属の電磁気学研究所にスカウトされて、それを受けた。彼も結婚生活にお金が必要だったのよ。その年の卒業生で同じ研究所に入ったのは他に四人いた。強羅木君と、向坂君と、私と、もう一人」
「優秀だったんだな」
「スカウトされたのは明日宮君だけよ。私たち後の四人は大学の推薦枠で」
「その内親父とあんたは死んだとして……まあ、あんたの主張は措くとして、どうして強羅木と向坂は今ではつまらない場所でくすぶっているんだ?」
「つまらない場所?」
「特殊警備員室の室長だよ」
「知らないわ。まあありそうなことは、そこが安全だからでしょうね」
「安全って、どういう意味だ?」
「あの頃私たちの間では……電磁体技術は崇高なものだった。そして強羅木君も向坂君も理想主義者だった。わかる? 彼らは電磁体が下らない目的のために利用されるのを見たくなかったのよ。例えば今守護天使だとか呼ばれているようなものを。だけどそもそもは、電磁体生成は陸軍が行っていた研究だった。そして陸軍は民間企業のACJと手を結び、それを今の形で普及させた」
 強羅木との会話を思い出し、クグチは身震いした。
『守護天使がどれも、少しずつ特定のイデオロギーを利用者に刷りこむことができるとしたら?』
『守護天使には潜在的にそういう能力がある』
 ふと、あれは警告だったのかと思う。
「私たちは優秀だった」
 ハツセリは壁際を歩き回った。
「だけど、明日宮君はQ国で亡くなった。私も死んだ。ACJに転職した向坂君と強羅木君は、つまらない部署に追いやられている。あの頃のみんなはいなくなってしまった」
 廃庭園の中央に戻ってきた。
「守護天使は不幸な人をたくさん生んだわ」
「幸福指数なんてものがあるからだ。幸福がなければ不幸もな
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