第4話 夢ノヨウ恋ノヨウ
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、友人たちが去り、気分が白けたせいで幸福指数のポイントが減ったからだ。岸本も妻を不幸だと思う。かわいそうだと。心から思う。
幸福がないと不幸になるのか……あるから不幸になるのか。
またしても思い出すのは、あの気に食わない新人だ。いい歳して反抗期のような目をしている。その顔に心の中で問いかける。守護天使などないほうがいいと思うか。だがな、そう思っているのはお前だけじゃない。粋がったガキじゃあるまいし、それくらいわかれよ。仕方がない。仕方がないんだ。
『――今夜は太陽観測衛星〈みらい〉特集! 技師たちの愛と感動の秘話はこの後すぐ! テレビの前の皆様はハンカチのご用意を……』
かれこれ十二時間前。
廃ビルへの不法侵入者を警察に引き渡した後、廃庭園で明日宮クグチを見つけた。彼は庭園の入り口に背を向けて立ち、こちらを見なかった。
「明日宮!」
呼びつけて、初めてこちらを振り向いた。
顔は土気色で、汗をかいていた。幽霊でも……何か想像を絶するものを見たような目で、明らかに何かに怯えていた。そのことに岸本は驚いたが、隠した。
「なんで勝手にいなくなった」
乱暴に問うと、少しずつ落ち着きを取り戻した様子を見せ、目を伏せてやがて謝った。
「すみません」
「すみませんじゃねえよ、理由聞いてるんだろうが」
「岸本さん、ここではやめましょう」
マキメが止めに入った。岸本は苛立って、クグチや、マキメや、その場にいる全員を睨み回した。
「一旦帰るぞ」
廃庭園を出る。その時、マキメがクグチに尋ねた。
「他に誰もいなかった?」
「はい」
「中庭の足跡、君の?」
思わず足を止めかけると、クグチはすかさず「はい」と答えた。
妻は寝たようだ。規則正しい息の音が聞こえる。
ニュース速報を告げるチャイムが、芸人たちの声に被って聞こえたので、画面を見た。
『日本時間22時36分、太陽観測衛星〈みらい〉打ち上げに抗議するQ国元首は、〈みらい〉打ち上げが実行された場合は武力でこれを破壊すると発表した』
そうテロップが出た。続きを待った。しかしそれで終わってしまった。岸本は次々チャンネルを変えた。しかしニュースはやっていなかった。
ホームパネルの電源を切った。遠くでスカイパネルが喚いている――戦いましょう! 戦いましょう!
―2―
クグチは自転車を買った。一番安いものだが十分だ。それで出勤した。
「いつからああいう人たちはいるんですか?」
その日は午後から新式銃の研修、午前はマキメが道東支社の各建物内を案内してくれる。
「どういう人たち?」
「人目を忍んで都市内部に幽霊を招じ入れようとする人たちです。他人の守護天使を汚染する危険を冒して、組織的にやろうという人たちは」
「はっきりしたことはわから
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