第4話 夢ノヨウ恋ノヨウ
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の幽霊と化した守護天使……廃電磁体です」
「眼鏡を外しても見えるぞ。肉体を持っている」
「この少女は自分を幽霊だと……死んだ女だと思っている。廃電磁体にそう思いこまされているんだ」
「馬鹿な。そんな話は聞いたこともない」
「守護天使にはできるのではありませんか? 廃電磁体と化す前の守護天使が完成された人格を持っていたら、それが誰かの持ち物である未完成の守護天使を情報汚染したら、その持ち主を自分が幽霊であると洗脳することができる。死んだ人間の記憶を植えつけて。絶対にないとは、言い切れなさそうな話じゃないですか」
クグチの推理をどう思っているのか、ハツセリの不気味な微笑からは読み取れない。
「……まあ、何故お前がそんな存在を匿うことになったかは後でゆっくり聞こう。もしもそんなことがあり得るのなら」
岸本が、二人の前まで歩いてくる。クグチは意識せぬうちに、ハツセリを庇うように立った。
「……廃電磁体はいかなるかたちであれ、居住区内に存在することは許されない」
「わかるわ。方法さえあれば私を消したいでしょ。だけどUC銃は効かないし、私を消すにはこの肉体を殺すしかない。そんなことを許す法律はこの国にはないわ」
「ハツセリ……」
一歩、二歩と後ずさりながら、クグチは尋ねた。
「どうしてそんなことを言うんだ? 怖くないのか?」
「死ぬのは怖くない。だって一度死んだもの。だけどね」
ハツセリは喋り続けた。
「どちらかと言えば死ぬのは嫌。私は私がどう弔われるのか知りたいから――」
振り向いた。ガラスのハープを背に、彼女の背後が強い光で赤く染まり、その黒髪の縁をそめ、顔を逆光で黒く塗り、目はらんらんと輝き――あれは――あの光は何だろう? あれは――
「知るまでは、存在していたいの」
あれは花火じゃない!
凄まじい震動によろめき、倒れた。轟音が、ガラスに、枯れた植物に、床に、椅子に、アクリルのハープに悲鳴をあげさせ、口から、耳から、頭皮から、人体の穴という穴から入りこんで、体内を滅茶苦茶に掻き乱した。
「ハツセリ!」
クグチは叫びながら、叫んでいる自分を他人のように感じた。
「ハツセリ!!」
耳をおさえながら顔を上げ、あの光は幻覚の花火ではなく、本物の紅蓮の炎で、槍のようにドームを貫き、都市を舐めたのだと直観した。
「ハツセリ……」
いない。
「ハツセリ」
いや、いる。後ろにいる。伏したクグチの髪に触れている。
「私、明日宮君のことが好きだった時期があったのよ」
クグチは意味を理解できない。彼女は何故、今それを言う?
わかるのは、彼女が真実を言っているということだ。それだけが伝わってくる。そのことが、彼女にとっては、今、どうしても、伝えなければならないことなのだ。それだけ、わかった。
「あなた
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