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Magic flare(マジック・フレア)
第4話 夢ノヨウ恋ノヨウ
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「何だって?」
「彼は」
 クグチは息を止めた。そうせずにいられないほど、彼女の声は苦悩に満ちていた。
「彼は自分のやり方で罪を償おうとしているようね」
「どういうことだ?」
「ゴエイ」
 脅迫するような低い声で、ハツセリは呼んだ。
「ゴエイ」
 今度は、優しく、懐かしむように。
「……彼は私を弔う方法を考えているのだわ」
「あんたは生きているじゃないか」
「誰が?」
 大輪の花火が、彼女の目を鋭く光らせた。
「誰って……あんただよ」
「私が生きているって、何故そんなことが言えるの?」
「だって、それは、少なくとも死んではいないじゃないか。死んでたら話はできない。死んでないなら生きている。あんたに……」
 クグチは一瞬、口ごもった。
「あんたに憑りついている……というか、その、幽霊を自称するあんたには死の記憶があるかもしれない。だけど」
「私は死んだわ。まぎれもなく。あのひどい空襲で」
「じゃあ俺が話してるあんたは何なんだ!」
「幽霊よ。人類は幽霊を作ったの。科学の力で」
 クグチはハツセリの両肩を強く掴んだ。
「じゃあ俺が今触れているこれは何だ。生きてる人間の体じゃないっていうのか?」
「この体が誰のものだと?」
 ハツセリはクグチの手を払いのけた。
「今、あなたと話している幽霊である私のもの? この体を持って生まれた女の子のもの? あなたは誰と話しているつもりなの?」
 クグチはわからず、それでも答えを探した。俺が話している相手は誰だろう。桑島メイミか。その記憶を受け継いだ守護天使か。それとも死んだ桑島メイミの守護天使と人格が癒着してしまっている少女の、もともとの人格か。
 ハツセリとは何を、誰を、どうした状態を指す名前なのだろう。
「それがわからないなら、あなたは最初から誰とも話してなんかいない」
 背後で石を蹴る音がした。ハツセリがクグチの肩越しに闇を見て、目を見開いた。
 クグチは何かが終わると予感しながら、ゆっくり振り向いた。
 花壇の陰に、岸本がいた。
 マキメもいた。
 その他のチームの仲間も数名いた。
「その――」
 隠れるのをやめた岸本が、近づいてくる。
「その女の子は誰だ」
 クグチは立ち尽くして、もういっそ、永遠に口をつぐんでいたいと願う。廃庭園を照らす花火は、目まぐるしくその色を変える。
 ハツセリはというと、鮮やかな赤い唇に笑みを乗せて、
「こんばんは、幽霊狩りの上司の人」
 挑発するような声で言った。
「どういうことだ、明日宮。何か怪しいと思ったら、そいつは誰だ」
「幽霊よ」
「黙ってろ!」
 クグチは叫んだ。
「幽霊だと?」
「この人は……彼女は……」
 微笑んだままのハツセリを、少しだけ振り返った。
「……恐らくは、多分、電子
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