第四章
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第四章
秀典はその彼女のところに来てだ。そうして声を掛けるのだった。
「おい」
「あれっ、貴方は確か」
「矢車だ」
自分から名乗るのだった。
「矢車秀典だ」
「確か転校生でボクシング部の」
「名前は知っていたか」
「はい、有名ですから」
だからだと答えるのだった。
「それで」
「そうだったのか」
「それでどうしてここに」
「委員の仕事だ」
実際に今その手には箒がある。それで委員全員で大掃除をしていたのだ。
「それでだ」
「それでなんですか」
「しかし君は一体どうして」
「私は」
「濡れている。そのままでは風邪をひくぞ」
そしてこう彼女に告げた。
それからだ。自分の詰襟を脱いで彼女のその肩の上に被せたのである。
「まずはそれを着てだ」
「あの、これは」
「風邪を引いたら何にもならない」
奈々に多くを言わせることはなかった。先に言ったのである。
「だからだ。まずはそれを羽織ってだ」
「はい」
「何処か暖かい部屋に行くといい」
こう彼女に告げたのである。
「そこで服を乾かすんだな。その間その制服は貸す」
「そうしてくれるんですか」
「そうするといい。じゃあな」
「はい、有り難うございます」
丁寧にお辞儀をして応える奈々だった。
「それじゃあ」
「部屋は。そうだな」
秀典は部屋についても言った。
「保健室がいいな」
「あそこですか」
「保健の先生は女の人だし乾かす暖房もある」
「だからですか」
「そこでならすぐに乾く。行くといい」
「有り難うございます。それでは」
こうして奈々は秀典が言うままに保健室に向かった。秀典はそのまま仕事に戻った。そしてそれが終わってからだ。彼は制服を受け取りに保健室に向かった。
まずは扉をノックした。そうして入ろうとする。しかしだった。
返事がない。まずはそれをいぶかしんだ。
しかし扉は開いていた。それで中に入るとだ。
まずは誰もいなかった。ただストーブのすぐ傍に彼のその詰襟の制服がかけられていた。その暖かさで乾かしているのは明らかだった。
だが他にはかけられている服はない。彼はそれをいぶかしく思った。
保健室の中には先生の机とそのストーブ、そしてカーテンがある。カーテンの中にはベッドがある。だが今はいる筈の奈々の姿はなかった。
探すがやはりそこにはいない。だがベッドの中からだった。
「矢車君ですか?」
「そうだ」
カーテンの向こうからの声に応えた。
「俺だが」
「お仕事終わったんですね」
「それで制服を受け取りに来たが」
「わかりました。それならですね」
「ストーブの傍にあるな」
「はい、それです」
その制服こそがというのである。
「それです」
「受け取っていい
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