暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
互いに一枚岩の先に知人が立っている事に少年達は気付かない
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詰まってるんだから』
過去だけを事実として飲み込む。そうしなければ死んだ人間はいつまでたっても表面上から死にきれない。ケンジにはその言葉が彼女の本心を表しているような気がした。
――きっとあの人にも何かあったんだ。それを僕が考える必要はないね。
とはいえ、彼女からはとても大切な事を学んだ。あの言葉はケンジを仲間の死から決別するきっかけとなって、今もこうして前を向いていられる。挫けて逃げ出す気は毛頭なかったが、精神的には参っていたかもしれない。そう思うと彼女には感謝してもし尽くせなかった。
そこで、赤島が間延びした声をバンの中に泳がせる。
「あー、そうだ暁。お前、玉木鈴奈って奴知ってるか?」
今の作戦に全く関係ない話なので、恐らく彼なりに新人を落ち着かせようとしているのかもしれない。彼の殺し屋らしかぬ優しさをありがたく思いながら、ケンジは言葉を返した。
「あ、いえ、知りません」
「あれ、知らないのか?お前山垣学園の生徒だよな」
「はい。あの、その人も山垣の?」
「おう。3年生だから知らなくてしょうがないかもな。そいつも殺し屋だから、一応覚えとけよ」
「あ、はい」
――同じ学校に殺し屋がいたなんて……。
自分も殺し屋ではあるが、同業者が校内で生活しているとは想像もしていなかった。今度教室に行って挨拶した方が良いかなと考えていたところで、赤島がミラー越しに後部座席のケンジを見て呟いた。
「……あのな、覚えておくだけで良いぞ」
「え?」
「無理して話をしようとは思うなって話だ」
「どうしてですか?」
「んん、あんな奴でもお前にとっては先輩だから悪く言う気はないが……そうだな、とりあえず男が二度振り向くぐらいには美人だ」
「え、凄いですね。僕全然知りませんでした」
「でも性格は組織一クソだから」
「え!?」
「そういうわけだ。いつか俺から紹介してやるよ」
続いて赤島の口から溜息が漏れる。……どうやら話をした分、彼が疲れてしまったらしい。話を切り出したのは自分ではないのに、何故か申し訳なくなってしまったケンジだった。
ちなみに、玉木鈴奈とは違うもう一人の殺し屋が自身の所属するクラスにいるのだが――ケンジがその事実に気付くのは、もっと先の話だ。
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