暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
互いに一枚岩の先に知人が立っている事に少年達は気付かない
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にはいる。俺が確実に見間違えなければ、の話だけど。

 ――……自信ないなあ。絶対違うだろうし。

 首を曲げると、そこには横浜のランドマークの一つ、横浜マリンタワーがそびえ立っている。とはいえ、そちらばかりをずっと眺めていると相手にバレてしまうので、すぐに目を逸らした。そして内心では否定しまくりの相手の名を、口の動きに乗せてみた。

 「……。……暁、ケンジ?」

 誰にも聞こえないボリュームでその名を口にし、彼は自嘲気味に笑った。自分のような下手人とは違って、クラスメイトの彼がこの世界にいるわけがない。一度も喋った事はないが、クラスで見ていれば分かる。彼はお人好しで、自分に嘘を吐かない真面目な人間だ。

 ――でも、だからこそ疑問だ。暁の顔が浮かんだっていう俺の思考が……。

 ……実際、要の目に狂いはなく、彼が見た殺し屋の正体はまさに的を射ていたのだが――それに気付くのはもう少し先となる。

*****

同時刻 山下公園

 横浜港のシンボル的場所である山下公園。平日はお年寄りの方々が散歩したり、夕方頃にランナーのコースとして使われるが、休日になると子供を連れた家族や恋人が休憩に使ったりする憩いの場となり、広々とした敷地と公園を彩る緑が開放的な気分にさせる。

 また、公園の至る所に『赤い靴を履いた女の子の像』や『西洋理髪発祥の地碑』などのオブジェが配されているのは、古い時代に海外との交流があった証拠である。港から日本の地に降り立った外国人は、当時の日本では存在すらしなかった知識を届け、それらは今に至る。現在では当然のように知られている事も、昔は画期的だったのだから、時間の変遷を感じる。

 そんな歴史ある公園には、時間帯もあって人はほとんどいない。時折酔っ払ったサラリーマンがベンチに腰掛けるものの、再びゆらめいた足取りで去っていく。

 その中で、山下埠頭内に進入する道路の脇に一台の黒いバンが停車していた。街灯の光で黒光りする車体の中は窺えず、どんな人間が乗っているのかすら分からない。

比較的大通りに面している道路なので、車の通りは時間帯問わず多い。高架上の首都高速がオレンジ色のライトを煌びやかに輝かせて、下を流れる横浜湾の水面に投影している。

 しかし、そのロマンチックな絵の中に映る黒いバンは存在だけで絵を台無しにしてしまっている。まさに邪魔という単語に相応しい。

そのバンの中に乗っている殺し屋メンバーの一人であるケンジは背中に冷たい汗を滲ませながら、外の景色を見ていた。

 ――正面からの突入。死ぬ危険性もあるが、まあ安心しな。

 数十分前、バンで移動している時に赤島が言っていた言葉だ。本来、殺し屋というのは対象に気付かれないまま正確に敵を処理するもので、相手の前に立っ
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