暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
硝煙の臭いで塗れる戦場の中で、殺し屋達は互いの命を奪い合う
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元へ急行する途中にも、発砲音が不規則なリズムで耳に飛び込んでいた。それが敵と攻防を繰り広げている宮条からだという事も分かっていた。

 ケンジは拳銃を下に向けながら走り、一つの角に背を付けてこれから向かう通路の状況を確認する。そして、これまでとは違う状況に頭の中が真っ白になりそうになった。

 そこには自分に背を向けた三人のタキシード姿の男達がいた。それぞれが持つ銃火器をさらに先の方に向け、ゆっくり歩を進めている。それを見て、奥の方に宮条がいるのだと確信した。

 ケンジの頭に幾つかの手段が浮かび上がる。一つ目は隣の廊下に行って宮条と脱出するという方法だ。これなら敵の殺し屋達を気にせず宮条に接触出来る。

 ――いや、これはダメだ。相手は熟練者なんだ、足音に気付かないわけがない。それに、相手が追い掛けて来たら元も子もない。

 ――なら後は何がある……?

 そこまで考えたところで、ケンジは自分の服の中にある物について思い出した。ホテルの制服に無理矢理押し込んだ、狩屋から貰った危険物。

 ――これだ、これであいつらを動けなくすれば!

 手段を選んでいる間にも男達は宮条のいる方へ近づいていく。このままでは彼女が危険に晒されるだけだ。ケンジは拳銃を腰に収納し、閃光弾を持った。そして狩屋に教えてもらった『気配の消し方』を実践する。

 それが成功したのか、単なる偶然か、少しずつ迫る敵の存在に殺し屋達は気付いていなかった。距離が三メートル程にまで縮まったところで、ケンジは三人のうち中心の男に向かってそれを投げた。

 一見すると爆弾にも見えなくない閃光弾はボールさながらの弧を描いて、男の頭の横をすり抜ける。

 「あ?何だおい……」

 男達はそれを確認する前にケンジの方へ振り返ろうとした。だが、目が閃光弾から逸れそうな際どいところで閃光弾はその身を破裂させた。

 目を焼くような眩い光と耳を貫く高音が、男達を中心に周囲に拡散される。

 「ぐ、ぅぅう……!」「っだぁ!クソったれがぁ!」「ッ……」

 男達はその場に倒れて動けなくなる。前もって両手で耳を塞ぎ、目を閉じて背を向けていたケンジは恐る恐る彼らの方に目を向けた。そこには、先程までの銃を撃つ恐ろしさを微塵も感じさせない、哀れな殺し屋達の姿があった。

 「……」

 ケンジ息を顰めてゆっくり廊下を歩き出した。敵は聴覚と視覚を失っているため、足音は認識されないし自分の姿も見られない。それでも緊張する一方で、妙な優越感を味わっている自分がいる事に気付いて憂鬱な気分になる。

 ――何で余裕になってるんだ。僕がやってるのは立派な犯罪だぞ。

 ――……。

 ケンジは顔を暗くして、緩慢な手つきで両腰から拳銃を取り出す。そしてうずくま
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