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横浜事変-the mixing black&white-
硝煙の臭いで塗れる戦場の中で、殺し屋達は互いの命を奪い合う
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りと開いた。

 それはルース達にとってはどうという事もないが、八幡にとってはこの世との永久の別れを想像させた。

 ドアから出てくる白髪ショートの女。かなり色白で、首元や滑らかで繊細な指からも色気を感じさせる。しかし硝煙のようなグレー色を帯びた目からは、誰よりも強力な殺意が込められていた。おまけに右手にはこれまで見た事のない拳銃が握られており、八幡は額縁の奥で目を見開いた。

 女――ミル・アクスタートは自分を見上げる長髪の男を見て、無言のままゆっくりと銃を向ける。冷徹な瞳と無機質な銃口を真正面から受けた八幡は、額に汗を溜めながらニヤリと口を歪めて言った。

 「せっかくの美人が、台無しになっているよ」

 それは八幡隆太という人間が生涯で初めて口にした口説きの言葉であり、眼前の外人達に対する小さな抗いと嫌味を含めた言葉だった。

*****

 二発目の銃声がケンジと狩屋が走る方向から聞こえてきた。「今度のは微妙に重い音だぜ」と憎々しげに呟く狩屋に、ケンジの中に湧く不安がさらに増幅する。

 そして銃声が聞こえた場所――ヘヴンヴォイスの宿泊していた部屋の前に来て、二人の思考は停止した。

 五人の屈強な男達。一人は自身の右手を左手で庇いながらうずくまっている。その少し前にはドアから出てきたと思われる女がいて、右手に持つ銃口の一つから僅かな硝煙が出ているのが見える。銃口と女の視線の先には――

 「……八幡さん!」

 赤い液体の海に横たわる彼を認識した時、ケンジは何もかも考えずに走り出した。だが寸でのところで狩屋によって肩を掴まれ、勢いよく廊下から弾き出された。狩屋は拳銃で威嚇射撃しつつ、廊下に避難させたケンジのところに滑り込んで来てこう言った。

 「下がるぞ!」

 「そ、そんな」

 「いいから聞け!」

 そこで再び銃声が響いた。それが自分達を狙ったものだという事に顔を引きつらせたケンジに、狩屋が追撃の言葉を浴びせかける。

 「これが俺達の仕事だ」

 普段見せない厳しい顔でそう言った先輩に対し、ケンジは何も言えなくなった。しかし、敵は彼らだけではない。

 二人が元来た道を戻る中、直線と右に分岐した通路で敵に遭遇してしまったのだ。彼らはケンジ達を視認した瞬間、手に掲げた銃を向けて一斉に乱射してくる。二人は死角に隠れて、やり返す機会を探る。

 「くそっ、なんであいつらここにいるんだ……?」

 「知ってるんですか?」

 「一人一人はな。あいつらはこの街の殺し屋だ。一匹狼で、ヤーさんとかに雇われてる筈なのに……何で集団になって攻撃してくんだ?今頃になって殺し屋統括情報局(おれら)に宣戦布告かよ?」

 苦虫を潰したような顔で呻く狩屋はジャケットの中から球
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