暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
硝煙の臭いで塗れる戦場の中で、殺し屋達は互いの命を奪い合う
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れだけ優秀な人間であっても未来の行方を覗けるわけではない。彼は脳をフル回転させ、自分がどうやってこの状況を脱するか思索し始めた。

 とりあえず、ヘヴンヴォイスを護衛する任務は放棄しても良い筈だ。彼らは敵だ。それについて、仲間は愚か本部も口にしていなかった。局長から緊急で連絡が来たわけでもない。彼らの存在は本当に誰も知らなかったのだ。

 ――いや。

 ――誰かがこいつらの情報を隠していた可能性については?

 ――……待て。今はこの場から逃げ出す方法を……。

 そこで突然、男達の一人が銃を向けてきた。八幡は瞬発的に身体を前斜めに飛ばし、敵の狙いから外れる。そして専門ではない投擲で銃を向けた男の手を狙う。偶然か奇跡か、その攻撃は見事ヒットし、男は銃を落としてうずくまった。

 しかし彼は自分の行動が相手の手の平にある事を思い知る。今の男は囮だったのだ。

 敵に接近する形となった八幡の右肩に、もう一人の男が放った銃弾が吸い込まれ、彼はその場で失速した。サプレッサーを付けていない銃の発砲音が僅か1秒間だけ伸縮し、空気を轟かせる。八幡は耳がつんざくのを感じながら、華美な装飾がなされた廊下に倒れてしまった。倒れた衝撃が余計に右肩を圧迫し、彼は短い悲鳴を漏らす。

敵との距離はそう遠くない。相手の歩く幅を考えておよそ四メートルほどだろうか。近くにボーカルの部屋がいる部屋の入口がある事に気付き、八幡の顔がさらに歪んだ。

 廊下に倒れる哀れな敵を見て、ルースは大柄な体格に似合った大きい拳を片手に当てつつ、哀れみの言葉を吐き出した。

 「俺も今のお前みたいな経験があるよ。目の前に敵がいるのに、自分は攻撃を受けて動けない。その時ってまさに死んでるような感じするよな」

 「……っ!」

 「でも殺すのは俺らじゃない。こっちはお前のせいで一人負傷者出ちまったから、その分は払ってもらうがな」

 「囮、じゃないのか」

 「まさか。俺らはバンドやるぐらい仲が良いんだぜ?お前が勝手に突っ込んできたんだろうが、俺らが悪いみたいに言うんじゃねぇ」

 少し迷惑そうな顔をするルース。それから八幡の近くにあるドアの方を見て、固有名詞を口にした。

 「ミル。近くに人が倒れてるから殺してやれ」

 「……!」

 八幡はギリ、と歯を食いしばり、このままでは自分が確実に死ぬ事を悟った。立ち上がろうとしたが、右肩から噴き出る猛烈な痛みがその意思を断ち切る。痛覚による呻きを漏らしながら、彼は敵に対話を試みた。

 「……貴様ら、何が目的だ」

 「見てて不憫だぜ、今のお前。ま、ちょっとお話してやるか。俺らの目的ね、そりゃもう、あれだ……」

 ルースが暇つぶしに理由を話そうとした時、彼らを挟むドアがゆっく
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