序論:「銀英伝」と「水滸伝」
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控えたいと思う。
さて、今回、考察の対象とする「第3巻・落日編」の成立プロセスについて、我々(すなわち「第3巻・落日編」の原稿所有者である伊勢トモノリと、私、尾張三郎)は、まったく異なる見解を有している。
すなわち伊勢トモノリが、『「第3巻・落日編」が田中芳樹先生自身の手によって大幅に加筆・増補され、15巻本の本編3〜10巻・外伝1〜5巻に成長した』と考えるのに対し、私、尾張三郎は「姓名不詳の銀英伝ファンが、15巻本の本編3〜10巻および外伝の内容を切り貼り・修正して1冊に圧縮した」と考えているのである。我々のいずれが正しいのかについては、私が入力し、投稿していく作品そのものによって判定していただきたいと思う。
ところで、15巻本と3巻本を対比してみて、私が特に気になるのは、「第3巻・落日編」だけに登場する人物や、「第3巻・落日編」独自のエピソードが全くみられないという点である。友人の伊勢トモノリは、それこそ「第3巻・落日編」が15巻本の母体・原形である証拠だ!と主張するのであるが、私は逆に、15巻本から切り貼りされて作られた証拠に思えるのである。
ただし、例外もある。私はかねてより、15巻本の第10巻、シヴァ聖域の会戦において発せられたラインハルトの全艦隊通信について、大変な違和感を感じていた。問題の通信内用を引用してみる。
「戦うにあたり、卿らにあらためて言っておこう。ゴールデンバウム王朝の過去はいざ知らず、ローエングラム王朝あるかぎり、銀河帝国の軍隊は、皇帝がかならず陣頭にたつ」
「予の息子もだ。ローエングラム王朝の皇帝は、兵士たちの背中にかくれて、安全な宮廷から戦争を指揮することはせぬ。卿らに誓約しよう、卑怯者がローエングラム王朝において至尊の座を占めることは、けっしてない、と……」
ラインハルトがこのセリフを発したのは、ユリアン艦隊との決戦前のことである。
「辺境のちっぽけな反乱勢力」相手に発するしては、立派すぎ・大げさすぎではなかろうか?
こんな内容の決めゼリフを述べるんだったら、もっと相応しい場面があったろう!と。
いっぽう3巻本では、このセリフは、自由惑星同盟最後の機動戦力であるビュコック艦隊との決戦前を前に発せられている。
自由惑星同盟を滅亡させ、150年戦争を集結させるという歴史の転換点に相応しい内容である。
3巻本におけるこのセリフの位置は、まことに納得できるものである。
読者のみなさんはどのように思われるだろうか。
次回以降、「第3巻・落日編」の投稿を、さっそくはじめたいと思う。
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