第四章
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してであった。
「貴方のことは何があっても」
「覚えていてくれるのですか」
「ええ、忘れることはないわ」
こう彼に告げた。
「何があっても」
「有り難うございます。では僕は」
「貴方は?」
「もう思い残すことはありません」
これが彼の言葉であった。
「もうこれで」
「そんな、それではもう」
「はい、お別れです」
また別れの言葉を告げた。そうして。
「永遠に・・・・・・」
最後にこう言ってゆっくりと目を閉じてだった。アドニスは愛するアフロディーテのその手の中で息絶えたのであった。
「アドニス・・・・・・」
女神はその彼をまだ抱いていた。そのうえで泣き続けていた。
「貴方のことは忘れない。忘れたくないから」
こう言って手をさっと動かした。するとだった。
アドニスの亡骸が変わった。光に包まれそうしてだった。
「花に」
「赤い花に」
「ええ、花になってそれで」
その赤い花を手に持って言うアフロディーテだった。
「この世を飾って。私はこの花を見てその度に貴方を思い出すわ。忘れたたくはないから」
言いながら涙を落とした。その涙は赤い花に落ちて花を濡らした。濡れた花はこれまでよりもさらに美しく見えた。悲しい美しさだった。
この花がアネモネだ。人々はこの花を見る度にアドニスという少年を思い出す。女神に愛されその心に永遠に残る少年をだ。この花は今も咲き誇っている。女神は今もこの花を見て彼のことを心に残しているのである。
アネモネ 完
2010・4・13
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