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藤村士郎が征く
第9話 西の飛燕VS大国の格闘王 必殺技、炸裂!?
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う追いついたのか?」

 観客の一部たる、とある親子を救った直後に雫がすぐそばに来ていた。

 「ガミガミガミガミ!!――――聞いてるんですか!?若!「あ、あの・・?」はい?」

 わが身も顧みない士郎の行動を雫が叱っていると、助けられた親子が恐る恐る声を掛けてきた。

 「助けていただいて、有り難う御座います。お陰様で、この子も無事でした」
 「いえ、大したことはしてませんので。君も大丈夫だったか?」
 「うん!有り難う、お兄ちゃん!」

 その様に親子の相手をする士郎の後ろから、カラカル兄弟が近づいてきた。

 「OH!シロウ!久しぶりですね!」
 「久しぶりじゃないですよ!?危うく大惨事になるところだったんですから!」
 「ソーリー、愛しきオーディエンス達・・・」

 ゲイルは士郎に言われて、親子に頭を下げる。その後ろで士郎はゲイツに向き直る。

 「そもそも、日本に来てるなんて初めて聞きましたよ?ゲイツさん」
 「何、サプライズだよ!ふっぅふっふーー!」

 などと会話を進める士郎達をよそに、燕は助かったと思っていた。
 九鬼からある(・・・)依頼をされているとはいえ、出来るだけ公式試合は無敗のままでいたいのが燕の本音だ。

 今回の決闘はいわば、関東に進出する際に《花を添える》的な意味の決闘だったからだ。
 その《花を添える》的な決闘で、負けてしまっては身も蓋もなくなる上、九鬼からの依頼も取り消されろ恐れすらあったのだ。そのため不謹慎とは言え、このままこの決闘がうやむやに終えてくれれば有り難い燕だった。

 それと気になる事が有る。

 「桐山さん、あの人は何方かわかりますか?」
 「はい、あの方は藤村士郎様ですね」
 「っ!藤村って、あの藤村ですか!?」
 「はい、その藤村ですね。藤村士郎様は、先代総組長の藤村雷画様のお孫様の一人で、現総組長の藤村切嗣様の実子でいらっしゃいます」

 桐山鯉の説明に、燕は返事をしつつふいにある言葉を零した。

 「かっこいいなぁ」

 恐らく無意識に出た言葉であったろうが、それを確かに聞き取った桐山は思う。

 (ここに、九鬼帝、九鬼従者部隊、序列零番、2位、3位、4位(あの方々)の内、一人でもいらっしゃれば誑し込む前に初期フラグの打ち立て作業(またか)と、仰られるでしょうね)

 「それにしても、ゲイル様、燕様この決闘はいかがいたしますか?」
 「What?」
 「う゛っ」

 桐山に問われた時にゲイルは、士郎との予期せぬ出会いに浸っていて、完全に決闘中であることを忘れていた。

 そして燕は、僅かな期待を打ち砕かれた気分だった。

 「ん〜〜?そうですね〜・・・ツバーメ、今回はイーブンにしませんか?」
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