第四十三話 踏み絵
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と頷いた。
まあ上手く行ったか。最初から領地取り上げ、税の支払いを提案すれば厳しいと難色を示しただろう。敢えて取り潰しという極端な強硬案を出したのは領地取り上げ、税の支払いを受け入れさせるためだ。これでリヒテンラーデ侯、ゲルラッハ子爵にも義父殿とリッテンハイム侯は賛成していると説明出来る。あの二人も渋々ではあれ受け入れるだろう。
帝国暦488年 4月 10日 オーディン ブラウンシュバイク邸 アントン・フェルナー
エーリッヒに書斎に来るように言われた。ここ最近エーリッヒは機嫌が良くない。シュトライト少将、アンスバッハ准将と共に急いで書斎に向かった。書斎に入るとエーリッヒにソファーに座るようにと勧められた。両端にシュトライト少将とアンスバッハ准将、真ん中に俺、またこの配置だ。勘弁して欲しいよ……。
「お話は御済になったのですか」
アンスバッハ准将が話しかけるとエーリッヒが頷いた。
「大公、リッテンハイム侯は私の考えに賛成してくれました」
思わず息を吐いた。俺だけじゃない、両脇の二人も息を吐いている。エーリッヒから相談を受けていたがあの二人が受け入れてくれるかどうか疑問だった。領地を取り上げる事に、貴族に税を払わせる事に同意したか……。
「この後はリヒテンラーデ侯、ゲルラッハ子爵に説明する事になります。多少は揉めるでしょうが大公とリッテンハイム侯が賛成しているとなれば反対はしないでしょう」
帝国は変わる、貴族が税を払うのだ、平民達も帝国が変わったと実感するだろう。
「シュトライト少将、領地を失う貴族達ですが私兵を有している筈です。領地を失えば不要になるでしょう、軍の方に組み入れたいと思います。どの程度の兵力になるか、調べて貰えますか。出来れば練度も分かれば有り難い」
「承知しました、早急に調べます」
なるほど、下手に放置すると海賊になりかねん。軍への編入が必要だな。五百家ともなるとかなりの兵力だろう、五万隻ぐらいになるかな、いや借金をしているからもっと少ないか……。
「それとアンスバッハ准将」
「はっ」
「彼らが保有している農奴の数を調べてください」
「農奴、ですか」
准将が問い返すとエーリッヒが“そうです”と頷いた。
「領地が無くなる以上農奴は不要になる。私有財産ですから政府が買い取る方向で進める必要が有るでしょう。貴族達の間で取引をすると安く叩かれる可能性が有る。政府が妥当な値段で買い取れば喜んでくれるでしょう。多少はサービスをしないと」
「なるほど、分かりました。直ぐ調べます」
「金がかかりますな」
俺が指摘するとエーリッヒがジロリと俺を見た。そんな怖い眼をしなくても良いだろう。
「そのための財源は用意した。貴族達から収益の十パーセントを徴収するし取り上
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