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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十三話 踏み絵
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るだけの能力を認められませんから」
二人が唸り声を上げた。

「悪くない取引だと思います。面倒な領地経営はしなくても良いし借金も無くなります。おまけに融資した資金はそのまま財産として認められる。財政状況は一気に改善するでしょう。領地を失う事に抵抗は有るかもしれませんが爵位はそのまま認めます。よくよく考えれば得をしたと理解出来る筈です」
「……」

「政府は直轄領が増えますしそこから直接税の税収が見込めます。短期的には赤字でも長期的に見れば元は取れる」
「……」
「それと領地経営をしない以上、税の免除は認められません。今後は税を納めて貰います」
また唸り声が聞こえた。

「領地を失い税を払うか……、厳しいな」
「うむ、厳しい。……公、もしこれを受け入れなければ如何なる」
「何もしません。但し暴動が起きれば……」
「取り潰すか」
「はい、彼らが望んだ事です。容赦はしません。私としてはその方が有り難いですね。これ以上あの連中の面倒をみるのは御免です」
二人が顔を顰めて大きく息を吐いた。不満か?

「これ以上は譲れません。借金を棒引きの上に融資も呉れてやると言っているのです、甘すぎるくらいですよ。平民達も簡単には納得しないでしょう、余程に丁寧に説明する必要が有ります。彼らに不満を持たせればその不満は政府に向かうのですから」
義父殿が大きく息を吐いた、何度目だ?

「已むを得んな。それで、エーリッヒ、他の連中は如何する。借金はしていないが融資を受けている連中だが」
「融資を回収するのは無理です。となれば融資を使って得ている収益の一部を領内開発に回す事で現状を認めるしかありません」
「なるほど、具体的には如何する」
「融資から得た収益の十パーセントを政府に収めさせます。そして三十パーセントを領内開発に投資させます。これは法律で義務付け違反すれば罰を与えます。基本的には罰金ですが違反の度合いが酷い場合には領地の取り上げも有ります。決算報告書と資産目録が作成されれば法の執行は難しくは有りません」

収益の全てを領内開発に投資しろと言えば貴族達は反発するだろう。しかし半分以上を自由に使って良いと言っているのだ。我慢して貰わなければ困る。平民達も不満は有るだろうが領内への投資金額を確保した。それに融資期間が長期になれば領内開発への投資金額は最終的には融資金額を超える可能性も有る。こっちも我慢してもらう。政府も定期的に収入を得ることが出来る。長期的には元が取れる筈だ。

「如何思うかな、リッテンハイム侯」
「領地取り上げ、税の支払いはいささか厳しいが已むを得まい。暴動が起きれば取り潰されても文句は言えぬのだ。それを考えれば優遇と言っても良いだろう。公の言う通り、甘過ぎる処置と非難が出かねんくらいだ」
義父殿が“そうだな”
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