第百八十二話 山中鹿之介その十二
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「毒を以て毒を制すじゃ」
「ですな、毒をこそですな」
「互いに争わせるのですな」
「独同士で潰させ」
「残った毒を潰す」
「そうするのが最善ですな」
「最善の策ですな」
こう話すのだった、そうしてだった。
彼等はその年老いた声にだ、こうも言った。
「流石は長老です」
「あの者達が皆倒れれば残る色は伊達と島津だけ」
「あの二家だけなら容易ですな」
「どちらもまだ小さいですし」
「今ならば」
「織田信長は確かに強い」
長老の声もだ、このことは認めていた。それは認めなければ策も何も進められるものではなかった。
しかしだ、その強い織田家をだというのだ。
「他の家をぶつけるのじゃ」
「今度は本願寺だけでなく」
「武田も上杉もぶつけ」
「互いにですな」
「本願寺だけで駄目ならじゃ」
最早本願寺は石山御坊だけだ、それだけ力を削がれている。織田家と本願寺を潰し合わさせるというのは失敗だ。
だが、だ。今度はというのだ。
「他の家もまとめてじゃ」
「ぶつけそうして」
「潰し合わせるのですな」
「そうする、この際織田家も他の家もまとめて争わせ潰し合わさせる」
これが長老の今の考えだった。
「そうしてからじゃ」
「後は、ですな」
「天下を」
「その通りじゃ、天下を闇で覆う」
望み、それを見ている言葉だった。
「そうするぞ」
「では」
「これからは」
「戦の用意じゃ」
それに入れというのだ。
「どの家も潰れたならな」
「その時に」
「これだけ待ったのじゃ」
今度は怨念だった、怨念を感じさせる言葉が出た。
「ならな」
「遂にですな」
「いよいよ」
「我等の悲願が成る」
「そうですな」
「その通りじゃ、動く用意は進める」
今の時点でだというのだ。
「ではいいな」
「はい、では」
「これから」
こう話してだ、そしてだった。
彼等は闇の中で動く用意をしていた、闇の中で殆どの者が知ることのない者達が蠢いていた。彼等の目的の為に。
第百八十二話 完
2014・5・16
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