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戦国異伝
第百八十二話 山中鹿之介その七

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「実際にはおらぬのですな」
「そうなるのう」
「実に奇怪なことであります」
「全くじゃ、面妖なこともある」
「しかしです」
 それでもと言う黒田だった。
「それもある程度はいいかと」
「はったりとしてか」
「はい」
 それでだというのだ。
「それがしはそう思いまする」
「十人、しかし実際には十六人の猛者が尼子家の為に戦っていると」
「その考えでじゃな」
「よいかと」
「そうしたやり方もあるか」
「はい、それで」
「そうなるか」 
 蜂須賀も納得した、そしてだった。
 とりあえずは彼等が姫路城に入るのを見送った。山中達はそこで毛利との戦の先陣を務めるべく用意に入るのだった。
 とにかく間もなくだった、織田家と他の家との戦は間もなくに迫っていた。織田家も既に用意は全て整えようとしていた。
 そしてだ、信長も言った。
「和議が切れればその時にじゃ」
「出陣ですな」
「そうなりますな」
「そうじゃ」
 その通りだとだ、信長は信行と信広に答えた。
「ではな」
「それではですな」
「我等も」
「それぞれ都と天王寺に戻れ」
 そこでだというのだ。
「よいな」
「はい、そして」
「和議が切れたならば」
「迎え撃て」
 敵をだというのだ、信長はその中で信行にはこう言った。
「都も何があるかわからんからな」
「はい、だからですな」
「前にも得体の知れぬ僧兵が出て来たしのう」
「そのこともあってですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「御主達はそれぞれ都と天王寺に戻ってじゃ」
「そうしてですな」
「兵を何時でも動ける様にして」
「公方様のこともな」
 信長は義昭のことにも言及した。
「近頃やけに銭を持っておられるとのことじゃが」
「はい」
 信行が兄のその言葉にすぐに答えた。
「都にいる者達から報が来ております」
「左様か」
「幕臣はほぼ全てが最早織田家の碌を貰っていますが」
「そうでない者もいてじゃな」
「はい」
 そしてだ、その者達がだった。
「あの二人です」
「やはりそうか」
「最早公方様はあの二人しかお傍に置かれませぬ」
「そして二人以外の話もじゃな」
「お聞きになられませぬ」
「では、じゃな」
「若しもですが」
 仮定としながらもだ、信行は真剣な危惧を以て信長に答えた。
「二人が挙兵を唆せば」
「その時はじゃな」
「都も騒がしくなります」
「ではじゃ」 
 それならとだ、信長はすぐに答えた。
「その時に備えてじゃ」
「都もですか」
「兵は二万置く」
 それだけだというのだ。
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