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美しき異形達
第二十五話 幻と現実その十三

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「では俺もだ」
「これまでの電流とは別に見せるものがあるのね」
「電流は電流で手は抜いていなかった」
 あくまで全力だったというのだ、これまでも。
 しかしだ、ここはというのだ。
「使い方は様々だ」
「電流のそれが、というのね」
「力は使い方によって形を変える」
 その強さが同じでもだ、それは変わるというのだ。
「それを見せてやろう」
「そういうことね」
「こうしてな」
「菖蒲さん、相手はクラゲよ」
 このことからだ、菖蒲は菫に言った。
「しかもカツオノエボシよ」
「電気クラベの中で一番毒が強いのよね」
「そして触手も長いわ」
 カツオノエボシはただ毒が強いから厄介なのではない、その触手は異様に長くカツオノエボシ本体を中心にして直径何十メートルにもなる。
 その触手のことをだ、菖蒲は菫に言ったのである。
「そこも気をつけて」
「触手が」
「あの触手の長さはあんなものではないわ」
 これまでの様な、というのだ。
「遥かにね」
「長いから」
「そう、気をつけて」
 こう菫に忠告するのだ。
「いいわね」
「そうなのね、カツオノエボシが猛毒なのは聞いていたけれど」
「それだけではないから」
 触手の長さ、それもあるからだというのだ。
「気をつけてね」
「わかったわ」
 菫も菖蒲の言葉に頷く、そして。
 間合いはそのままでも警戒の念を強めた、目だけで怪人を見ていると。
 実際に怪人の両手の周りにある触手が一気に伸びてだ、そのうえでそれが結界の様に怪人そして菫の周りを覆った。
 その触手を見つつだ、怪人は鋭い声で言った。
「こうしてだ」
「後はというのね」
「この触手に貴様が少しでも触れればだ」
 その時はというのだ。
「毒を受けてだ」
「死ぬ」
「確実にな」
 まさにだ、そうなるというのだ。
「電流の如き衝撃を受けてな」
「そうなるわね」
「安心しろ、苦しむことはない」
 すぐに死ぬからだというのだ。
「一瞬で終わるからな」
「よく言われる言葉ね」
「そうだな、しかしその通りだ」
 やはりだ、嘘は言わないと言う怪人だった。
「俺は相手を苦しませなしない」
「あくまで闘いを楽しみたいだけね」
「それしか興味はない」
 菫にこのことを言うのだった。
「ではいいな、今からな」
「死ねというのね」
「そうだ、一瞬でな」
「確かに死ぬにあたって苦しまないことはいいことよ」
 菫もそのことはよしとした。
 だがそれだけではないことは当然だった、何しろその死ぬ相手は自分であり死ぬつもりも一切ないからだ。
 それでだ、怪人に笑みを浮かべて言った。
「けれどまだね、私は」
「死ぬつもりはないか」
「ええ、ないわ」
 その通りだというのだ。
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