第1部 ゼロの使い魔
第7章 トリステインの武器屋
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粋な闖入者である。
数少ない例外に属する人間でも、よほどの場合でない限り鬱陶しく感じるのであった。
その日も、どんどんとドアが叩かれたのでタバサはとりあえず無視した。
そのうちに、激しく叩かれ始めた。
タバサは立ち上がらずに、めんどくさそうに小さな唇を動かしてルーンを呟き、机に立てかけてあった自分の身長より大きい杖を振った。
『サイレント』、風属性の魔法である。
タバサは風属性の魔法を得意とするメイジなのである。
『サイレント』によって、彼女の集中を妨げるノックの音は消え去った。
その間、表情はピクリとも変わらない。
しかし、ドアは勢いよく開かれた。
タバサは闖入者に気づいたが、本から目を離さなかった。
入ってきたのは、キュルケだった。
彼女は二言、三言、大げさに何かを喚いたが、『サイレント』の呪文が効力を発揮しているため、声がタバサに届かない。
キュルケはタバサの本を取り上げた。
そして、タバサの肩を掴んで自分に振り向かせる。
タバサは、無表情にキュルケの顔を見つめていた。
その顔からはいかなる感情も窺えないが、歓迎していないことは確かであった。
しかし、入ってきたのはキュルケである。
タバサの友人である。
これが他の相手なら、難なく部屋から『ウィンド・ブレイク』でも使って吹き飛ばすところなのだが、キュルケは数少ない例外であった。
仕方なく、タバサは『サイレント』の魔法を解いた。
いきなりスイッチを入れたオルゴールのように、キュルケの口から言葉が飛び出した。
「タバサ。今から出かけるわよ!早く支度をしてちょうだい!」
「虚無の曜日」
それで十分であると言わんばかりに、タバサはキュルケの手から本を取り返そうとした。
キュルケは高く本を掲げた。
背の高いキュルケがそうするだけで、タバサの手は本に届かない。
「わかってる。あなたにとって虚無の曜日がどんな日だか、あたしは痛いほどよく知ってるわよ。でも、今はね、そんなこと言ってられないの。恋なのよ!恋!」
それでわかるでしょ?
と言わんばかりのキュルケの態度であるが、タバサは首を振った。
キュルケは感情で動くが、タバサは理屈で動く。
どうにも対照的な2人である。
そんな2人は、何故か仲がよい。
「そうね。あなたは説明しないと動かないのよね。ああもう!あたしね、恋したの!でね?その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!あたしはそれを追って、2人がどこに行くのか突き止めなくちゃいけないの!わかった?」
タバサは首を振った。それでどうして自分に頼むのか、理由がわからなかった。
「出かけたのよ!馬に乗って!
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