第九話
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「その薬を作った人を紹介して」
「なんで?」
「………」
口を噤むタバサ。
理由はまあ、察しは着いている。
母親の心を狂わせている水魔法の解除薬だろう。
「悪いが紹介する事は出来ない」
物語が進めば解除されるのだ、俺が下手に関わることもない。
この時の俺はそう思っていた。
「お礼はする」
「すまないが断る。俺達はこれ以上君達に関わる気が無いんだ。悪いがこれで失礼する」
そう言ってマントをひるがえし離れようとしたところで俺のマントを必死になってつかむタバサ。
「放して」
「お願い」
必死に懇願するタバサ。
その時城門の向こうから声がかけられた。
「レディの頼み事は聞くものだよミスタ」
振り向くとそこには金の髪、長身で整った顔立ちの男が一人。
「貴方は?」
「すまない、今ぼくは名乗る名前を失っていてね。今はウィルと名乗っている」
金髪で整った顔立ち、無くした名前、どこか気品漂うたたずまい、この時期にキュルケの実家に居る不審人物。
まさかウェールズなのか?
それは根拠のない勘だ。
俺は鎌をかけてみる事にした。
「アルビオンの皇太子がこんなところに居ようとは」
「君は何故それを…君が教えたのか?」
視線をタバサに移して問いかけるウィルことウェールズ。
フルフルと首を振るタバサ。
と言うか、正直すぎです、皇子様…
「ばれちゃしょうがない。そう、ぼくはウェールズ・テューターだ。君は?」
「アイオリア・ド・オランと申します。こちらはソラフィア・メルセデス」
俺の紹介にソラは頷くだけだ。
いや一応皇太子に対して失礼だが…まあ、いいか。
「とりあえず中へ、ここは冷える」
そうウェールズが促す。
「いえ。私達は失礼します」
「まあ待ちたまえ。もう夜も遅い、それに疲れているだろう。朝までこちらに留まった方が君達の為だと思うのだが」
ぐ……確かに今俺は一歩も動けないくらい疲れている、しかしここに居るのは余り得策では無い。
そんな事を考えていると。
「好意に甘えて、朝まで世話になります」
「ソラ!?」
「アオも限界のはず。今は体を休めないと」
「う…」
何故だろう?
俺は絶対的なところでソラに敵わない気がするのは…
タバサはここに俺達が留まるならば未だ説得のチャンスは有ると引き下がり、俺達は城門をくぐった。
俺は案内された客室のベッドに腰掛、一息つくと今までの疲労から意識を手放した。
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