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【短編集】現実だってファンタジー
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【神為る土地で】神話伝承相続権
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命運を取り巻くぜぇ……」

既に世界各地で伝承者は暴れ始めている。基本的に好戦的なのが多いらしく、その力を存分に振るって色んなものをぶち壊しまくり、決闘しまくり、そして世界一決定戦みたいなノリで力試しをしている奴も少なくないという。

イコール世紀末の予感。わが命、風前の灯なり。
このまま一人で戦っては、この先生きのこれない気がする。

なので取り敢えずネットで仲間を集った。迎撃のために戦力を整えなければ。
そうして数日間家に籠ってダラダラしながら某掲示板で粘った結果、なんと似たような不安を抱えているという人が3人も集まった!やったぜ!これで死亡フラグ回避だ!

とまあそんな訳で現在、集まったメンバーは居酒屋で身の上話を始めていた。
店主が懇意にしていた人なので、伝承者お断りみたいなことはなかった。但し、俺っちはまだギリギリ未成年なのでソフトドリンクだが。

「武智さんは炎が出せるんですね?実は私も多少は炎の心得があるんですよ」
「へー!そりゃ奇縁だなぁ!」

取り敢えず主催者が自己紹介を終えると、集合メンバーの1人である古畑(ふるはた)麗壬(うるみ)さんがそんなことを言いだした。30歳くらいの落ち着いた男性だ。

「あ、ちなみに私はプロメテウスの力なんですよー……ははは」

がつがつ鶏肉を食べながら語る古畑さん。
プロメテウスと言えば、人類に火を齎したとされるギリシャ神話の不死の神だ。ヘパイストスの炉から勝手に火種を持ち出した、火事場泥棒ならぬ炎泥棒である。
ただ、そのせいで人間が戦争を始めたと最高神ゼウスの怒りを受け、彼は生きながら鳥にはらわたを食べられ続けるというとんでもない苦行を強いられたりしている。

「ええ、ええ。最近妙にカラスとかの視線が怖くてですね。幸い肉になってしまえば平気ですが……」
「うわー、死亡フラグではないけどなかなかエグイ……」
「そうなんです。正直、生き地獄を受ける気がしてなりません」

無言で握手を交わす俺っちと古畑さん。来年にはいい酒が飲めそうである。

「それで、荒音ちゃんは何の力を?」

モデルかと聞きたくなるほどのすらりとした体型の美人、荒音るみさん。
年齢は分からないが、多分同い年くらいだろう。さっきから冷奴をちまちま食べている彼女は、俺っちの質問に透き通った小声で答える。

「……北欧神話、ユミル」
「おお……神話三連続だね」

伝承者には英雄とかも含まれているとは言うが、3人連続となると驚くべきことなのかもしれない。
しかし、ユミルと言えば……

「オーディン、ヴィリ、ヴェーの三神に殺されて……解体されて……世界にされた。死んでからタイプ」
「これはまた盛大な死んでからタイプですね……」
「嫌な系統もあったもんだ……」


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