第4章 戦争と平和
第33話 お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ
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遠い昔を見るように視線を虚空へ向ける曹操を前に、無言で俺は聞く。
「俺が8歳の日。隣の村にお使いを頼まれていて、帰ってくると村は火に包まれていた。何が何だかわからなかった。とにかく家に急いだよ。そして、家に着いた俺の目の前で――――」
そこで、曹操は息を詰まらせ、平静を保とうと一度大きく息を吐き。
「――妹は生きながら喰われた」
俺は黙って曹操の言葉に耳を傾ける。
言葉では冷静だったが、強く握った拳からは、血がにじみ出ていた。
「今でも覚えている。妹が最期に『お兄ちゃん』と俺のことを呼んだんだ。今でも夢にみる。なぜ助けてくれなかったと俺を問い詰めるんだ。今でも後悔している。なぜ俺はあのとき村にいなかったのかと」
「……はぐれ悪魔だったのか」
「その通りだ。そして、絶体絶命のピンチで、俺の神器は覚醒し、仇を討った。ははッ、どこにでもある物語の英雄みたいだろう? 俺の大切なものは何一つ守れなかったのに。そんな人間が英雄たちのトップにいるんだ。笑えるだろう?」
そう自嘲する曹操の表情を見て、何も言えなくなる。
思えば、コイツは自分の昔を語らないやつだった。
何度尋ねても教えてくれなかった。英雄は素性を隠した方が、それらしい。と言って。
曹操が語った悲劇は、ありふれたものだ。
英雄派に属する者の誰もが、悪魔や堕天使、天使どもによって、大切なものを奪われている。
ただ、曹操がそういった人間を救い上げ、化け物退治に固執する、その理由の一端が分かった気がした。
「俺の行動原理は所詮復讐さ。覇道を進む英雄らしくないと思わないか?」
「いや、お前ほど英雄派の首領に相応しい人間はいないよ、曹操。それに、英雄に悲劇はつきものさ。……八神はやての生い立ちとも似ているな。確かに、惹かれるのも無理はない、か」
そういって、ニヤリと笑いかけると、曹操もいつもの不敵な笑みを浮かべた。
「なぜ今になって語る気になったんだ?」
「だって――この話をすれば、嫌でも俺とはやての仲を認めざるを得ないだろう?」
そんな理由かよ! しんみりしたさっきまでの俺、無駄じゃん!
場を明るくするための話題転換かもしれない――が、半分くらい本音だな、これは。
やれやれ、友のためにひと肌脱ぎますかね。
「もし認められないのなら。俺がはやての素晴らしさをたっぷりと説いてあげ――」
「いや、それはいい」
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