第4章 戦争と平和
第33話 お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ
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―はやてさんは、わたしたち悪魔を憎悪しています。
あのとき、アーシアがリアスに放った一言が、なぜか耳に残り頭を離れなかった。
◆
「曹操、ちょっと時間いいか?」
「ん? どうした、ゲオルグ」
英雄派首領の曹操はいつも忙しい。
ちょうど暇になったころを見計らって、声をかける。
手に持った何かをみつめて、ぼうっとしていた。
たまに見かける姿だ。声をかけがたい雰囲気があるが、今日は無視する。
「八神はやてのことなんだが……本当にただの一目ぼれなのか?」
若干言葉を濁しながら、尋ねてみる。
八神はやてと会ったときの曹操の激変ぶりは英雄派を震撼させた。
だが、その後の仕事ではいままでと変わらず――いや、今まで以上かもしれない――熱心に活動していた。
やはりうちのトップは頼りになる。と、皆安堵しているところだ。
だが、俺とコイツの仲は長い。一目ぼれ以外の何かがある、と俺のカンが言っていた。
「……」
無言で手に持っていた何かをこちらに投げてよこしてきた。
キャッチすると、それはロケットペンダントのようだった。
とりたてて特別なところはない、古ぼけたただのロケットペンダントだ。
魔術的な要素も見当たらない。ただ、丁寧に手入れされていることは分かった。
「中を見ていいのか?」
曹操は無言でうなずく。中を開らいて見ると、写真があった。
8歳ぐらいの男の子と、6歳ぐらいの女の子が映っている。
二人とも笑顔だった。
「これは……曹操?」
よくよく見ると、男の子は曹操の面影がある。
ただ、最初は分からなかった。
このように満面の笑みを浮かべるコイツは、長い付き合いの俺ですら初めて見る。
とすると、隣にいる少女は、妹だろうか。
たしかに、曹操に似ているが、それ以上に――――
「――似ているだろう? 八神はやてに」
俺の心を読んだように、無言だった曹操は声をかけてきた。
顔を上げると、泣きそうで笑いそうな、自嘲するような顔を浮かべている。
思わず息をのんでしまう。
「一番幸せだったころの写真だ。いや、手元に残った唯一の写真といった方がいいか」
「これが八神はやてに執着する理由か?」
「それは否定しない。だが、一目ぼれしたのも本当だ」
「……詳しい話を聞かせて貰えるか」
尋ねると、苦笑しながら曹操は語った。
「俺は、中国の山村で生まれた。決して裕福とは言えなかった。が、優しい両親と親切な村人に囲まれていた。妹はとりわけ俺になついていてな。可愛かったよ。とりたてて特別なものはなかったが――幸せな日々だった」
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