第34話 頑固爺とドラ息子
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うのはいくらなんでも少なすぎる。一星系の防衛戦力ではない。一星域の全戦力(戦闘艦艇のみ)で二三九隻。戦艦はたったの五隻。巡航艦が一三五隻に駆逐艦が一〇四隻。当然ながら宇宙母艦は配備されていない。巡察艦隊と警備艦隊の区別もあるわけもない。兵員数は一万四〇〇〇人弱。定員充足率六〇パーセント以下……惑星住人の一〇人に一人が軍人である。シャレではなく、軍事基地も産業の一つなのだ。まぁ三六〇〇人しかいないエコニアに比べれば、軍艦があるだけまだマシかもしれない。
そして俺の転属に合わせこの星域の防衛司令部の顔触れも幾人か変更されることになった。正確に言えば、防衛司令部の顔触れが情報参謀と後方参謀を除いて交代するので、大尉の一人くらい捩じ込めるスペースがあったというだけ。当然司令部付き幕僚などという役職に前任者はいない。新任司令官の名前はまだ知らされていないが、結果として一番乗りする形になった俺は、前任の司令官、首席参謀、情報参謀、後方参謀、副官からヒアリングし、一応の星域状況を把握する事が出来た。もはや誰が司令官に来ようと現状を良くすることはできないというのが五人の一致した意見であり、俺もおおよそ同意できた。つまりそれが示す意味は、もう中央に戻ることはできないということ。暗澹たる気分に包まれつつも、交代する各人と引き継ぎ資料を作成し、個人的にも星域関連資料を作成して、新しい司令部の着任を待った。
「で、最初に到着した貴官が、オマケに付いてきたという御曹司か」
司令官用の執務席に座った老人は、俺を一瞥してから、まずは一撃とばかり毒舌を打ち込んでくる。
まだ若干黒いものが残ってはいるが、大部分が白髪に覆われた頭部。眉も髭もモサモサして、額には長年の苦労を忍ばせる皺が多数刻みこまれている。だが歳を感じさせない、瞼の奥に輝く瞳には力がみなぎっていた。短気で頑固な人物と言われる。後の第五艦隊司令官にして、ラリサお気に入りの戦艦リオ・グランデを墓標とした、同盟軍最後の宇宙艦隊司令長官……
「さようです。ビュコック准将閣下」
「『さようです』か。あ〜士官学校七八〇期生首席卒業。査閲部で一年、ケリムで一年、フェザーンで一年。現在二三歳で大尉。なるほど」
頑固オヤジことアレクサンドル=ビュコック准将は、俺の経歴書と俺の顔を交互に見ながら頬づえをつき、つまらなさそうな口調で言った。
「大尉。わしが大尉に昇進したのは三五を過ぎてからになってからなんじゃよ。軍歴二〇年を前にしてようやく駆逐艦を任されてな」
「存じております」
「……わしの経歴を、何故貴官は知っているのかね?」
明かに不愉快だといった表情でビュコックの爺さんは俺を睨み上げる。確かに爺さんから見れば不愉快な事だろう。二等兵からの叩き上げ、現在は六一歳だから四二年目というところだ。こ
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