第二章
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第二章
黒い上着に白いズボンを身に着けているアジア系の青年だった。細長い頬の痩せた顔で目は吊り目だ。しかも細く狐を思わせる。細く薄い眉も吊り上っている。
髪は茶色でその髪を少し伸ばしている。背は一八〇近く随分とすらりとしている。その青年がそこにいたのだ。
「僕の国のことは」
「ええ、イギリスよりも歴史が古いんですよね」
「二千年はあるって言われてますね」
「ローマ帝国より昔ですか」
「ああ、そうなりますね」
そのアジア系の若者はそれを聞いてであった。こう言うのだった。
「そういえば」
「二千六百年あるというのは本当ですか?」
「いや、そこまであったかどうかは疑問ですが」
流石にそれは確かに言わなかった。
「しかし歴史は古いですね」
「そうですね。その国からですね」
「はい、来ました」
こう述べるのだった。
「親の仕事の関係で」
「それで来たのですね」
「来たのですか。ただ」
「ただ?」
「雨多くないですか?」
彼は言う。
「それもかなり」
「そうですね。この国は雨が多いのですよ」
「日本も多いですけれどね」
「あっ、日本もですか」
「はい。梅雨がありまして」
今度は日本の気候についても話した。
「それに台風もあって」
「台風ですか」
「かなり多くて。ただ」
「ただ?」
「ここはそれ以上ですね」
その雨の話をさらにする。今は晴れているがだ。それでも雨の印象が強いのだった。
「本当に」
「そうですよね。けれどそれだけに」
「それだけにですか」
「晴れた日は嬉しいですね」
にこりと笑ってサリーに話してきた。明るく親しい笑顔だった。
「本当に」
「はい。それでですけれど」
「それで?」
「お名前は何というのでしょうか」
彼に尋ねてだった。そうしてだ。
「私はサリーといいます」
「サリーさんですか」
「サリー=リーマンといいます」
自分の名前も話した。
「ずっとここに住んでいます」
「リーマンさんですか」
「はい」
にこりと笑って述べた。
「そういいます」
「わかりました。それで僕は」
「貴方のお名前は?」
「石上といいます」
まずはその姓からだった。
「石上京介といいます」
「石上さんですね」
「はい、宜しく御願いします」
こう話してであった。そしてだ。
この日本人石神京介は晴れの日にはいつも庭の前をその秋田犬を連れて散歩してくるようになった。
そのうえでだ。二人で話をする。彼等は次第に親密になってきていた。
「そうですか、イギリスは」
「はい、雨が多くて」
雨の話以外にも色々とするようになっていた。
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