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その魂に祝福を
魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方4
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力を喰い破るように、深淵のような魔力が滲みだしてくる。さらなる封印を解くように、その手がゆっくりと開かれた。
「なのは」
 静かな声で、妹の名前を呼ぶ。だが、その静けさは嵐の予兆だ。
「そのデバイスを渡せ」
「……渡したら、どうするの?」
 耳鳴りのように風が蠢く。ただの風だ。だが、それは獣の唸り声のようにも聞こえた。
「破壊する。お前をこれ以上魔法に関わらせる気はない。……もっと早くそうするべきだったよ。今ならそう思う」
「嫌だって言ったら?」
 闇の密度が増した。そんな錯覚を覚えた。――いや、錯覚ではないだろう。彼の右腕から立ち上る魔力はその密度を増している。
「力づくでも破壊する。お前がそれがなくても魔法を使えるようになってしまう前にな」
 彼は本気だった。その結果、妹に怨まれたとしても、もう彼は躊躇わない。
「私は魔法使いになりたい訳じゃない。でも、今はこの力が必要なの」
 なのはがデバイスを構えた。彼女も退かないだろう。
「私だって光お兄ちゃんの力になりたい。あの子達を助けたい。そのために必要なの」
 御神光は、高町なのはにだけは危害を加えない。その前提が崩れる音を確かに聞いた。
『つーわけだ。だからよ、相棒。こうしようぜ?』
 両者の激突が始まってしまう前に、その魔術書が言った。
『そのチビから一発くらったらオマエの負けだ。大人しく連れてってやれ。つーか、今のオマエにでも一発カマせるなら、そこの黒いガキよりは役に立つだろう?』
 にやりとして、リブロムが続ける。
『それとも、オレの相棒はこんなガキに一撃くらっちまうような奴だったか?』
 フン――と、彼は不満そうに鼻を鳴らす。それが合図だった。肯定したのか否定したのかも分からないまま、ついに両者が動き出す。
「待って! 二人とも――」
 私達の――あるいはもう一人の兄の横やりを嫌ったのか、光は思い切りなのはを上空に斬り上げる。幸いその一撃が直撃したのはデバイスだったらしい。それでも、激しい火花と共になのはの身体が宙に舞った。彼女はそのまま上空へと舞い上がり――御神光もまた背中の翼で空へと舞い上がる。たちまちの間に空中戦が始まった。
「おっと。邪魔をしてやって欲しくないな」
 仲裁に入ろうとして――再び首筋に剣が突き付けられた。想定外にも程がある。
「待って。なのはさんでは彼に勝てないわ! 早く止めないと――!」
「そんな事は分かっていますよ。いえ、なのはの魔法の才能がどれほどのものかは俺には分かりませんが……例えどれほどの才能であっても、『魔法使い』御神光はそんな言葉一つで勝ちを拾わせてくれるような軟な相手じゃない。そんな事は俺にも充分にね」
 今のなのはではまず勝てないだろう――あの二人の兄は、そう言って肩をすくめた。その声からはすでに険が取
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