暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方3
[2/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の記憶から探り当てる。その記憶と彼女の話を照らし合わせる限り、かなりよく似ている。だからだろう。少しだけ興味がわいた。他人の欲望は千差万別であり、ドッペルゲンガーやジェミニを除けば同じ魔物が存在する事はない――が、その一方で同じような欲望であれば同じような姿になる事もある。スライムなどはその典型だ。
 そして、結論から言えばその魔物――女剣士の抱えていた欲望は恩師が遭遇した魔物と良く似たものだった。自分が救済した彼女には何となくその魔物の元となった女性の面影があるように思えた。ひょっとしたら彼女の子孫なのかもしれない――別に本気でそう思った訳でもないが。
「そんなに似ているかしら?」
 ひょっとしたら、血は争えないという事なのかもしれない――そう告げると、その女剣士は微妙な顔をした。
 ともあれ、それから自分と女剣士、そして魔女との奇妙で爛れた――そして、不器用で青臭い関係はしばらく続く事になる訳だが……その歪な蜜月も自分の生涯においてはほんの一瞬の事にすぎない。そして、終わりは唐突にやってきた。
 いや――唐突ではない。そして、覚悟はしていたように思える。無関係ではいられないと、それは分かっていたつもりだった。……それでも、彼女達と共にいれば自分もただの魔法使いで――ただの人間でいられるような、そんな気がしていた。
 神聖ロムルス帝国。ロムルス帝国の流れを汲むその帝国が再び魔法使いの住まう大地に――今はサンクダム領と呼ばれるこの場所に侵攻を仕掛けてきた。第二次オリンピア戦争の開戦。それにより、世界は再び混迷を極めようとしている。連中の軍備を支える『鋼』の存在。それは、単なる製鉄技術の向上では説明がつかなかった。人知を超えた何かが作用している。いや……『奴ら』がほくそ笑んでいるのはもはや疑いない事だった。連中が再び『やり直し』をしようとしているのなら、自分も再び戦場に戻らなければならない。そんな事は、嫌でも分かっていた。
「正直に言えば、私は……私達はジェフリー・リブロムを怨んでいるわ」
 その日の夜。不意に彼女達はそんな事を言った。束の間言葉を失ったのを覚えている。
 ジェフリー・リブロム。その魔法使いは、自分にとっての恩人である。そんな事は彼女とて知っているはずだった。それに、
「その魔法使いがいなければ、お前と私達が出会う事なんてありえなかったという事は理解しているつもりだ。だが……」
 自分と彼女達は生まれた時代が違う。自分が生まれてからすでに三百年が経っているのだ。もしも、自分に不老不死の力がなければ、出会う事などあり得ない。それでも、
「こんなものを貴方に押し付けた、彼が憎い」
 彼女はそう言って自分の右腕――マーリンを取り込み異形と化したその腕を握り締め
た。彼女の爪が――異形化し白く輝くその指先が喰い込み、血が滲む
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ