第三章
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第三章
「だから静かなんですか」
「いや、さっき一人いたけれどね」
「一人ですか?」
「あっ、違ったな」
しかしだった。だがここで管理人はふと思い出した様に言った。
「違った。あんただけだよ」
「僕だけですか」
「そう、あんただけだよ」
急に笑顔になって彼に話すのだった。
「あんただけだよ、ここにいるのは」
「そうですか。僕だけですか」
「そう、あんただけ」
管理人は話しながら水草が生い茂っている場所を見ていた。まるでそこに何かがあるようにだ。見ながらそのうえで話をするのだった。
「それじゃあ。泳ぐんだね」
「はい、そうです」
「うん、じゃあ見つけるんだな」
管理人の言葉は最後は小声だった。だから健には今は聞こえなかった。彼は気付かないまま着替えて準備体操をした。そして湖の中に入った。湖はまだ朝の世界の中にあり朝もやがまだあった。その湖の中に入って泳ぎはじめたのである。
「さて、と」
湖の中に入り泳ぎはじめる。そして潜ってみる。すると。
何かが先に見えた。それを見てすぐに察した。
「あれかな」
その小さく赤いものを見てそれが花だと思った。そうしてそこに向かう。
そしてそこに向かいあらためて潜る。すると。
「えっ!?」
健はそこにあったものを見て思わず声をあげた。花だけではなかった。
「ええと、何で!?」
思わずまずは顔をあげて水面から出た。そうしてだ。
「何でここにいるの?」
「待っていたの」
奈々だった。そこに彼女がいたのだ。赤いビキニの彼女がいた。プロポーションはかなりのものだがそれは今の彼には全く見えなかった。
「さっきから」
「あの、さっきからって」
「だって。こう言わないと」
奈々も水面に上がっていた。そうしてそのうえで二人で向かい合っている。湖の中で向かい合っているのである。
「来てくれなかったし二人になれなかったし」
「来てくれた。二人で」
「お花の話は本当よ」
奈々の顔が赤らんできていた。
「それはね」
「その見つけて御願いすれば願いが適うっていう」
「ええ。けれど願ったのは私だったの」
「私?」
「そう、私」
彼女自身だという。こう彼に話すのである。
「私が御願いしたの。山中君とのこと」
「僕と坂本さんとのことを」
「そう、一緒になれるように」
そうだというのだった。
「二人一緒になれるように」
「二人でって」
健は話がよくわからない。それはどうしてもなのだった。
「一体何を」
「ええと」
奈々は彼が気付かないことに内心業を煮やしてきた。それでまずは周りを見回した。そうして誰もいないことを確かめてだ。そのうえで言うのだった。
「好きだから」
「好きって?」
「だから山中君のことが好きなの
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