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Magic flare(マジック・フレア)
第2話 泣ク看守
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たい?」
「件の廃電磁体について、俺は他の班員にも話を聞いた。一人ずつ面談を行ったんだ。だが、そんなことを言ったのはお前だけだ」
 クグチは目の前の男が何を考えているかわからず、逃げ出したくなった。
「だからお前は、北に行くんだ」
「退室していいか」
「構わん。出て行って、北で幽霊狩りをしろ。どう狩るか考えろ。何故狩るか考えろ」
 ドアノブを回した。掌に汗をかいていて、いやに滑った。
「見送りには行けん」
 クグチは返事をしなかった。
 部屋で一人になると、強羅木は深い虚脱感に身を任せ、椅子に座りこんだ。
 初めて対面した時、クグチは幼かった。まだ六歳だった。育ててきた。何もかもが初めてで、どう接するのが正しいのかわからなかった。十五年。とうとう彼は自分の手をはなれる。熱いものが目の縁までこみ上げてきた。
 自由に生きろ、クグチ。
 守護天使を持たないお前に社会は不便を強いるだろう。それでも、守護天使を持たなくても生きてゆけることが、社会に、居住区に、ACJに対する武器になる。
 お前は俺に怒っているだろう。憎んでさえいるだろう。しかしどうか、怒りに捕らわれてくれるな。憎しみに縛られるな。
 自分のために生きろ。

 ―3―

 クグチは同僚たちの誰にも何も言わずに居住区を出た。空港直通の地下シャトルから地上に出れば、電磁装飾のない本物の夜が、世界中に広がっていた。トランクを預けて機内へ。座席は最後尾だった。
 時と共に人が増える。
 身なりのいい中年の婦人の団体がどっと流れてきて広がった。中央辺りの席を占拠し、クグチの耳を苛む。
「この間の詩作会、あなた見事なものでしてよ。あれほど的確で美しい言葉運びはなかなかできるものではありませんわ」
「私なんてまだまだですわ。あなたの詩こそ濃密で、オリジナリティがあって、私あなたのファンですのよ」
「いやぁー、お二人とも本当に才能に満ちていらして……」
「あなたこそ素晴らしい感受性をお持ちで……」
「そうそう、新しい先生のお作品も、実に見事……」
 その内、一人がトイレに立った。クグチは何となく顔を見て気付いた。その中年女の耳には電磁体の音声を聞くための無線イヤホンがなかった。
 Sランク市民だ。
 幸福指数を最大の星十個まで上げたら、特典としてイヤホンやレンズの機能を体内に埋めこむ手術を受けることができる。居住区外での守護天使の呼び出しは禁止されているが、幸福指数の表示がなくても、無線イヤホンの有無でSランク市民だけは見分けがつく。
 なるほど、彼女らは守護天使の目がない時でも、守護天使に好まれる振舞いを心得ている。僻みだとわかっているが、クグチは無性に苛立った。
 守護天使を持たない層の大多数は、子供の頃親に経済力がなかった、またはそういう教育方針のもと
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