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Magic flare(マジック・フレア)
第2話 泣ク看守
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「他に質問はないか」
「ございません。話が以上なら、退室します。今晩の出立に向けて準備をしなければなりませんので」
「よし。今日は退勤していい」
「わかりました」
 これが、南紀支社での最後となる。二年半の退屈な生活が終わる。
「クグチ」
 ドアノブに手をかけた時、何か切実なものを秘めた声が呼び止めた。
「何故俺がお前に守護天使を持たせなかったと思う」
「……今更そんなことを質問すればよかったのか? 今までに俺が何十回聞いて、あんたが何十回答えなかったと思ってる?」
「数か月以内に最大規模の太陽フレアが訪れる。そして最後の磁気嵐がくる。それがやんだら戦争が再開するだろう」
 そう言って立ち上がった。
「守護天使は持ち主にとって最も真摯な話し相手だ。利用者は守護天使を相手に会話することで、ゲーム感覚で自分の考えをまとめたり、事実の一面に気付く機会を得ることができる」
「それがどうした」
「その守護天使がどれも、少しずつ特定のイデオロギーを利用者に刷りこむことができるとしたら?  例えば好戦的な気分に、例えば差別主義的なものの考え方に、自分自身の考えとして、国民一人一人を誘導できるとしたら? 守護天使には潜在的にそういう能力がある。ところでACJの事業の一部が間もなく公営のものとなり、政府が馬鹿にならない事業資金を提供するようになるが、どう思う」
「あんたは自分が何を言っているかわかってるのか」
「もし仮に政府が守護天使を利用して国民の思想を誘導しようとしているとしたら――仮に、だ。絵空事だ。だがそういうことがあるとしたら、お前は怒りを感じるか」
「別に」
「だろうな。そういう人間になるように俺が育てた」
 じんわりと、怒りが苦い水のように広がるのをクグチは堪えた。
「……興味はある。持ち主を特定の思想に誘導する守護天使があるとすれば、持ち主の死後どういう幽霊になるのか」
「今いる幽霊は、どういう幽霊だ? お前にはどう見える?」
「どういうって……」
「電子の幽霊たちは自意識を持っている。自分を人間だと思っている。死んだ人間だとな。そんな存在が何を思って存在している。奴らはどうすれば消える」
「勝手に消えやしない。奴らは磁気嵐に固着している。それくらいのことはあんたも知ってるだろう」
「奴らに存在し続けるための希望があるとしたら、それは何だ」
「見つけてほしいんだ」
 クグチは即座に答えた。
「どういうことだ?」
「見つけて、と、前回の幽霊は言い残した。自分を死んだ人間だと思いこんでいるのなら、死体を見つけてくれという意味以外にないだろう。あいつらは人間として弔われたいんだ」
 強羅木の目の中で、希望と苦悩の光がせめぎあい、奇妙な様相を見せた。クグチは反応に困って立ち尽くした。
「……何だ、何が言い
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