1部
日向 ネジ
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ために、日向は現当主の死体の提供とヒジリ様の日向よりの追放を要求した。
当然、日向にそれを断れる筈などなくその条件を呑んだ。
そして、父上はヒアシ様の代わりに殺され、日向の家から勘当されたヒジリ様の代わりに俺はヒナタ様に仕える事になった。
俺はたった一日で父と主を失う事になった。
そんな俺に彼女は初めて涙を俺に見せながら、絞り出すような声で一言こう言った。
「ごめんなさい……」
俺はあの日の彼女が忘れられない。あれ程人前では強かった彼女がその年齢通りの子供のように泣いていた姿を思い出すたびに、俺は宗家への恨みを再認識する。
父上の犠牲とヒジリ様の苦悩をヒナタ様は何も知らずにのうのうと生きている事が許せない。そして、それを良しとする宗家そのものが憎くて堪らない。
俺はあんなものの為に殺されるのは絶対に御免だ。ヒジリ様と違い単なる温室育ちのお嬢様の為に生きるなど、そんなものは死んでも嫌だ。
「ネジ、何を苛立っている」
俺はヒジリ様に声をかけられ我に返った。
「いえ、少し考え事を……」
「ふむ、君の事だどうせいつぞやの事を思い返していたのだろう。それについては君の中で整理をつける他ないので私から言うことはないが……そろそろ先生の所へ戻るぞ」
「はい、分かりました……あの、一つだけいいですか?」
「なんだ?」
「貴女は恨んでいないのですか?」
俺は思わずそんな質問を彼女にしてしまった。それが一体なにになるわけでもなく、その問いに何の意味もないと知っていても俺は問わずにはいられなかった。
すると、彼女は仮面の裏で少し悲しそうな表情を浮かべて答えた。
「私は恨む側ではないよ、恨まれる側の人間だ」
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