暁 〜小説投稿サイト〜
見ればわかる
第六章

[8]前話

第六章

「何か幸せな姿を見るのは」
「凄くいいっていうか」
「そうよね」
 こう二人で話すのだった。
「人の幸せを見るのは」
「何ていうかね」
「やっぱりいいものよね」
「しかも」
 尚且つであった。
「美男美女のカップル」
「おまけに相思相愛」
「最高の組み合わせよね」
「全くね」
 こう話をするのであった。
「こうなって然るべきだった」
「あっ、部長」
「どうもです」
 その海外部長もいた。二人を結びつけた立役者の一人だ。
「相思相愛なら一緒になればいい」
「愛するならば、ですか」
「それなら」
「素直になれないのは困ったことだ」
 このことについても言うのだった。
「全くな」
「全く、ですか」
「それはなのですね」
「斉藤君は非常に優秀な人間だ」
 これは誰もが認めることだった。
「だが」
「だが、ですか」
「そうだ。恋愛には奥手だ」
 部下のそうした資質を見抜いていた。もっともこれは彼のこれまでの行動ですぐにわかることではあった。実際に会社の誰もがわかっていた。
「そして間宮君もな」
「まあ誰が見てもわかるっていいますか」
「そうですよね」
「あんなのじゃ」
「中学生の恋愛みたいで」
「それなら後ろから押してやるだけだ」
 部長は腕を組んで言った。
「それだけだ」
「後ろからですか」
「押して前にやるんですね」
「それもお互いをだ。そうすればいいだけのことだ」
 まさにそうだというのである。
「鳴かぬなら」
「鳴かせてやろう不如帰」
「そういうことですね」
 二人で話すのであった。
「二人で」
「そういうことですか」
「そうだな」
 ここで言ったのは社長だった。当然彼も列席している。姪とその相手の一生の晴れ姿を見る為だ。その為に教会にいるのである。
「全く。こうしたことには奥手だとはな」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「これで二人一緒だ」
 そうなったというのだ。
「バージンロードについた」
「ええ。後は二人でやってくれます」
 部長は冷静な言葉で述べた。
「それだけです」
「つまりハッピーエンド?」
「そうよね」
「今の流れは」
 皆このことも話すのだった。
「じゃあ私達としては」
「二人の今とこれからを」
「楽しく見ていきますか」
「そうだ。何かあればまた後ろから押して」
「そうしていきましょう」 
 最後に社長と部長が言った。教会の扉が開かれそこから二人が来た。白いタキシードとウェディングドレスの二人が白い光を背に並んでそこにいた。今二人は幸せの道を踏みだしたのであった。二人で。


見ればわかる   完


                 2010・3・9

[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ