幽鬼の支配者編
EP.27 最後の幕上げ
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、彼を嫌ってはいない。
「(ルーシィを、任せたぞ)」
ギルドの中心人物である彼を想い、自分もやるべきことをやろうと、休息を終えて立ち上がろうとしたその時だ……。
「おや……お一人ですかな、“妖精女王”?」
突然掛けられた猫撫で声、そしてそれに込められた強烈な悪意に、エルザは背筋を凍らせると素早く立ち上がった。
臨戦態勢を整えて声の方を向いてみれば、そこに居たのは……魔導士ギルド・幽鬼の支配者のギルドマスター、ジョゼ・ポーラ。
青を基調とした正装に身を包み、首元に掛けられている十字架と四葉のクローバーを模したエンブレム――聖十の証を煌めかせ、笑みを浮かべている。
「随分と楽しませてくれましたね。望外の余興もありましたし、これは熨斗を付けてお返ししないといけないと思うのですが……如何ですかな、”妖精女王”」
「マスター・ジョゼ……」
言葉と恰好だけを取れば、贈り物に礼を言う紳士にしか思えない。だが、ジョゼの顔に浮かんでいる笑みが台無しにしていた。
憤怒、侮蔑、憎悪――――いったいどう混ぜたらこんなにどす黒く出来上がるのかと思うほどに、彼の笑みには負の感情に満ちていたのだ。
「(なんて邪悪で強大な魔力だ。これが聖十、それもマスターと互角といわれる男か……)」
余裕綽々のジョゼとは対照的に、撒き散らされる悪意と邪悪な亡霊の魔力にエルザは顔を歪め、青ざめさせる。
だが……
「……いや、結構だ。それよりまだ最後の幕が上がっていない。存分に楽しんでいってくれ」
冷や汗を拭い、魔法剣を換装、ジョゼに切っ先を向けた。
大将であるこの男を討てば、全て終わる――――そう信じて、絶望的な戦力差に萎えそうになる心を奮いあがらせる。
「この状況で強がりを言えるとは、大した肝だ。しかし……もう幕引きなのですよ!」
ジョゼは吐き捨てるようにそう言うと、魔力を右手に収束。
名も無き亡霊の怨嗟の叫びをその魔力に乗せて、エルザに向けて解き放った。
だが彼は気付かない…………彼女の口元が笑みの形を象っていた事に。
そして彼女は気付いていた…………迫りくる魔力の柱が起こす轟音の中でも、はっきりと聞こえる足音に。
「いいや、幕上げだ―――――」
その言葉と共に、影がエルザの前に飛び出た。
影は両手に収束させた魔力を放出、ガリガリと何かを削るような音を立てながら、ジョゼの攻撃を散らせると、余波で塵が立ち上って煙となり、3人の視界を塞ぐ。
「ほう、これはこれは……」
だがジョゼも然るもの。この程度では驚かず、口元に仄暗い歓喜の笑みを浮かべる。
そして煙が晴れ……剣を構える
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