幽鬼の支配者編
EP.27 最後の幕上げ
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ドラゴンの如き猛々しさを放っていた。
= = =
ミラジェーンたちと分かれたワタルは第六感を頼りに、エルザと合流しようと走っていた。
ジョゼが魔力を送った事によって“幽兵”が強化された事も、例によって魔力感知で把握している。
そのため、一刻も早くジョゼを討伐しなければ――そう思っていたのだが……
「! これは……ナツか……?」
突然、記憶にあるものよりずっと力強い炎の魔力の奔流を感じ取り、ワタルは足を止めた。
急いでいるのにも関わらず、そうしてしまうほどに……増大したナツの魔力は強大だったのだ。
「ったく、また一段と荒々しくなっちゃって……こっちだな……」
言葉とは裏腹に、ナツの頼もしい力の開花に顔を綻ばせる。
そして、だいたいの位置を把握した彼は足を速めたのだが……
「ッ……何だ、この魔力……!?」
距離があるにもかかわらず、吐き気すら感じられるほどの邪悪な大魔力を感知。服に氷を入れられたかのような悪寒に、ワタルは再び立ち止まった。
今まで、聖十大魔道やそれに匹敵するであろう魔導士たちと対峙した経験はあるが……感知しただけで寒気すら感じる存在はなかった。
嫌でも理解できてしまう――――ついに幽鬼の主が腰を上げたのだ。
「動き出したな、怪物め……。しかも……クソッ!」
ジョゼが現れたその場所はエルザの至近。
ワタルは舌打ちをする時間も惜しいとばかりに、疾風のように通路を駆け抜ける。
「エルザ……クソ、間に合ってくれよ……!」
= = =
再び大広間。
エルザは瓦礫に背を預けて、大広間の天井を見上げていた。
大理石で造られたその天井は高温の熱で歪められて破られ、大穴が開けられている。
もちろんナツの仕業だ。
「まったく……変わらないな、アイツは……」
無駄に物を破壊する癖は、この非常時にも健在のようだと、エルザは苦笑していた。
仲間とギルドのためならば、本気で怒って本気で笑って本気で泣く――――どんな状況にあってもその芯が変わらないナツは、エルザとワタルの信頼のおける、初めての後輩魔導士だ。口元に浮かぶ笑みは、人一倍目を掛けていた自負があるからこそ、である。
暴れん坊で喧嘩っ早いが人懐っこく、ギルドにいるだけで見ている者を笑顔にしてくれるナツ。
なにかと手の掛かる男だが、ギルドの皆がそんな彼を好いている。
時にいがみ合う事もあるが、それは変わらない。
『妖精の尻尾の魔導士で、ナツ・ドラグニルを嫌う者はいない』
エルザはそう思っているし、事実、よくナツと喧嘩をするグレイや見下しているラクサスも
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