幽鬼の支配者編
EP.27 最後の幕上げ
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が分かったためだったが……エルザの反応は静かなものだった。
「命を食う魔法、か……」
「さあ……楽しもうではないか、“妖精女王”。貴女にこの空域が耐えられますかな?」
魔力のリミッターと一緒に理性の枷を外したアリアの狂気の笑みにも応えず、エルザは不快気に呟くと、両手に魔法剣を換装する。
「……今、最高に虫の居所が悪いのでな――」
「はぁ?」
「……一撃で決めさせてもらうぞ」
「フン……やって見せろ!!」
迫りくる、生命を食らう魔力に向けて吶喊。
戦闘に向けた彼女は名刀のように研ぎ澄まされており、苛立ちがさらにその感覚を鋭利なものにしていく。
怒りすらも己の武器にする――――彼女の類稀な戦闘センスが為せる業であった。
そして……
「馬鹿な……!?」
エルザの刃が不可視のはずの空域を捉え、魔法剣によっていとも容易く無力化されていく。
絶対の自信を持っていた魔法が通じない事に驚愕し、恐怖交じりの言葉を上げるアリアだったが……それが最後の言葉だった。
「私の空域を切り裂いて……」
「失せろ――――」
アリアに肉薄したエルザは、後背部の4本の白銀の翼が特徴的な“天輪の鎧”に換装する。
『鎧』というには肌の露出度が高く、魔法防御以外の物理的な防御にはあまり貢献しないが、多数の刃の扱いと範囲攻撃に長けた、いうなれば『攻撃用』の鎧……彼女が最も使う頻度が高い鎧だ。
「“天輪・繚乱の剣”!!」
「グハァッ!!」
突進の勢いのまま、両手の魔法剣ですれ違いざまに切り裂くと同時に周囲に展開した魔法剣をアリアに殺到させる。
驚愕と恐怖で硬直した彼になす術は無く、全ての閃光に貫かれた彼は苦悶の叫びを上げると崩れ落ちた。
アリアは自身の強力な魔力を、視界を闇で覆う事によってリミッターを掛けていた。だがそれは言い換えれば、自分の力の制御ができていない、という事になる。
自然界の猛獣ですら自分の力を支配下に置いているというのに、アリアはその莫大な魔力を垂れ流すのみで、完璧に支配できていなかったのだ。
『ある程度以上の実力者の話になる。今の俺やお前には当てはまらないが……まあ聞け』
『ああ、分かった』
『よろしい…………制御されていない力は厄介だ。だが、完全に支配下に置かれた力に比べれば、その脅威は半分にも満たない。だからこそ、魔導士はまず己を支配する事から始めなくてはならないんだ』
『己を支配する……?』
『そうだ。力ある者は、その力でどんな事が出来るのかを理解し、決して本能のままに振るってはいけない。強くなるのに重要なのは魔力でも、闘争心でもない。まずは“理性”を一番の武器にするんだ』
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