第33話 決められた天秤
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ルビンスキーと会った次の日には、アグバヤニ大佐から呼び出しを受けて、ドミニクとの関係を説明させられた。一通り事実を説明すると大佐は最初こそ頷いていたが、フェザーン自治政府から『好ましからざる行動』と指摘されたことを俺に告げた。
「その女性との関係が悪いとは言わん。君の倫理観に、私は口を出すつもりはない。ただ君がその女性を利用し、同盟に有為な情報を入手した功績はともかく、フェザーン当局はあまり快く思ってはいないようだ」
いちいち大佐の言うことはもっともでもあり、同時に俺の神経を逆なでさせるものであり、自分の馬鹿さを痛感させるものでもあるので、俺は大佐に何も応えなかった。それが逆に大佐を困惑させたのか、しなくてもいい咳払いをしてから、大佐は書類を開いて俺に告げた。
「駐在弁務官からも君の行動を問題だと言ってきている……残念だが君には転属してもらうことになる。統合作戦本部人事部も事態を憂慮し、一週間後を目処に転属先を連絡するそうだ。それまでは駐在武官宿舎での謹慎を命じる」
「承知しました」
他の駐在武官も似たようなことをやっているのに、自分だけ処分されるのはおかしいではないか、と抗議するまでもなくあっさりと俺が応えたもので、大佐はいぶかしげに俺を数秒見ていたが、結局追い払うような手振りで、俺に退出を命じた。
宿舎での謹慎となれば当然ドミニクの店に行くことは出来ない。荷物と資料を整理し、朝昼晩と食堂で食事をし、ただ時間が過ぎるのを待つ。同僚もあえて遠巻きにして近寄ってこない。彼らとて俺と同じような傷を持っている。ただ相手はドミニクのような女性ではなく、もっと欲の皮の突っ張った男であり、『そういう』関係ではないというだけで。
一週間後、再び大佐に呼び出されると、執務室で俺は辞令を受けた。同盟軍の徽章を頂点に印刷したピラピラの辞令書に記載されていた俺の次の赴任先は、マーロヴィア星域防衛司令部付幕僚。宇宙歴七八七年八月三〇日までに赴任せよとの指示だった。
マーロヴィア星域はハイネセンから四五〇〇光年。フェザーンからは約六〇〇〇光年。自由惑星同盟きってのド辺境で、ハイネセンからでも余裕で一月以上の旅程になる。それを八月三〇日と断ってまで書いてあるということは、『ハイネセンに寄るな』と言っているに等しい。フェザーンからはポレヴィト・ランテマリオ・ガンダルヴァ・トリプラ・ライガールと少ない定期便を綱渡りしていくことになるだろう。しっかりとチケットが用意されているのは、フェザーン側の配慮かも知れない。
そのチケットに従い軌道エレベーターで宇宙港まで上り、フェザーン船籍の旅客船に乗り込む前のこと。ふと壁一面に映された映像に目を奪われた。赤茶色の長い髪は繰り返されるフラッシュによって輝きを放ち、きめ細やかな肌はより美しく瑞々しく写
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